【第6回・前編】土屋ケアカレッジカンパニー主催 特別社内研修会

<第6回・前編>『褥瘡の管理とトラブルシューティング』

2026年1月15日、「医療的ケア実施にあたっての知識と心得」をテーマとする特別社内研修会の第6回目が、土屋ケアカレッジカンパニー主催により開催されました。

本研修では、第2回および第5回にもご登壇いただいた平良亮介先生を再びお迎えし、「褥瘡の管理とトラブルシューティング」をテーマにご講義いただきました。

アテンダントの皆さんが安心して医療的ケアに関われるよう、褥瘡の発生メカニズムと予防の基本を中心に、判断に迷いやすい皮膚トラブルの見分け方や、悪化を防ぐためのケアのポイントについて、現場で活かせる視点から解説していただきました。

第6回研修会・前編の概要

開催日:2026/1/15(木) 
内容:<第6回・前編>『褥瘡の管理とトラブルシューティング』
講師:平良亮介氏(水島協同病院 看護部 看護師長/皮膚・排泄ケア特定認定看護師)   
参加対象者:土屋グループの全メンバー(非常勤含む)

第6回研修会・前編『褥瘡の管理とトラブルシューティング』の概要

<褥瘡とは>

褥瘡=「床ずれ」

日本褥瘡学会による定義
身体に加わった外力は、骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。
この状況が一定時間持続して、組織が不可逆的な阻血障害に陥った状態。

定義の解説

褥瘡は骨の上に発生します。
軟部組織(皮下組織)の血流低下や停止が、一般的に約2時間(栄養状態や基礎疾患により異なる)続くと、組織は回復できない状態となり、褥瘡が形成されます。

褥瘡の原因とリスク要因

直接的な三大原因

  • 圧迫
  • ずれ
  • 摩擦

*これらに浸軟と湿潤が加わります。特に寝たきりの方のおむつ内は、褥瘡が最も発生しやすい場所になります。

褥瘡のリスク要因

  • 個体要因(身体状況)
    ・ADLの低下
    ・病的な骨突出
    ・拘縮
    ・低栄養状態
    ・皮膚の状態(浸軟など)
    ・尿・便失禁
    ・疾患(糖尿病、心不全、COPD
    などの呼吸不全、脊椎損傷、ALSなど)
  • 社会的・環境的要因
    ・介護力不足
    ・経済的事情による体圧分散寝具の未使用
    ・リハビリ不足
    ・情報不足

褥瘡のできやすい部位

褥瘡が最も発生しやすい場所は仙骨部(お尻の割れ目の少し上にある出っ張り部分)です。
体位によって好発部位は異なります。

  • 仰臥位(あおむけ):仙骨部、踵
  • 側臥位:腸骨、外果、肩、耳
  • ギャッチアップ・車いす使用者:尾骨部(仙骨部の下)、坐骨(お尻の付け根)

*褥瘡は頭部にも発生します。頭部は皮下組織が非常に薄く、褥瘡ができるとすぐに骨が出てしまいます。後頭部にできた褥瘡は非常に治りづらいです。

Point:
褥瘡の発生しやすい部位は骨突出部位=骨のある場所です。
褥瘡は「骨と皮膚表層の間」にできるので骨が下にあり、これが褥瘡かどうかを見分ける1つのポイントです。

そのため、骨の解剖を知り、骨突出部位(仙骨、尾骨部、腸骨部、転子部など)を理解しておくことが大切です。

<褥瘡発生後のアルゴリズム>

褥瘡発生後の治療・処置は、医師や看護師が行いますが、介護職員は「ポジショニング」、「体位転換」、「日常生活の中での除圧」という、非常に重要な役割を担っています。

スキンケア、入浴介助、清拭など、日常ケアの場面での関わりが悪化防止につながります。

褥瘡を発見したときの対応法

  • 報告
  • 原因の検討

褥瘡の原因=圧迫・ずれ・摩擦+浸軟・湿潤が、なぜ起こったのかを考えます。

(例)インフルエンザ、誤嚥性肺炎などで発熱、咳・痰が増加し、寝込んでしまった⇒ADLの低下⇒褥瘡リスクが上昇

*体調不良時には、体調管理、呼吸・発熱状態の注意はもちろん、褥瘡が発生していないかのリスクアセスメントが非常に重要です。

褥瘡発生後のケアの基本

  • 皮膚の観察
  • 褥瘡発生の原因・要因アセスメント
  • 圧迫・ずれの排除
  • 処置・スキンケア栄養管理
  • 栄養管理
  • リハビリテーション
  • 患者・家族などへの教育

介護職の実践ポイント

介護職の方が実際に褥瘡の処置にかかわるシチュエーションは少ないかもしれませんが、排泄介助時にガーゼ交換を行う場面はあるかと思います。

①テープの剥がし方
テープやフィルムを垂直に剥がしてしまうと、皮膚が引っ張られてダメージを負います。そのため、以下の「愛護的」なケアが重要です。

・平行に引っ張って剥がす
・皮膚を押さえながら、テープ等を上に持ち上げて剥がす

Point:
剥がしたガーゼは重要な観察項目になるため、ぜひ取っておいてください。
褥瘡から出ていた浸出液や匂いが、褥瘡の改善・悪化の重要なサインとなります。

②褥瘡の洗浄方法
・洗浄液:38度程度に温めた水道水
*現場では、感覚が麻痺しづらい二の腕などで温度を確認することを勧めています。
・洗浄剤(石けん・ボディソープ)の使用を推奨
・創部だけでなく、周りの皮膚の洗浄も重要

③テープの貼り方
ガーゼを押さえつけるように貼るのではなく、皮膚とガーゼに沿わせて貼ることを推奨しています。褥瘡にガーゼを当てておく目的は、浸出液の吸収、乾燥予防、外的な刺激から傷を守ることです。

補足:薬の塗布について
褥瘡の状態によって薬も使い分けます。

・乾燥している褥瘡:ゲーベンクリーム
・浸出液が多い褥瘡:イソジンシュガー

*使用は必ず医療職の判断に基づきます。

<予防について>

褥瘡は予防が重要です。

予防対策

①体圧分散マットレス
褥瘡の予防に効果的な対策として推奨度が高いものが、体圧分散マットレス(エアマット、ウレタンマットなど)の使用です。なお、体圧分散マットレスは介護保険でレンタルできます。

Point:
エアマットは体重設定をきちんと行わないと効果的ではないため、体重設定をしっかりとしましょう。

②体位交換
・通常:2時間以内(推奨度B)
・体圧分散マットレス使用時:4時間以内(推奨度B)
・ポジショニング:30度側臥位、90度仰臥位(推奨度B)

Point:
利用者さんの状況・褥瘡の状態に応じたケア方法を選択しましょう。
在宅であれば、家族との生活で実施可能な体位変換のプランニングが重要です。

現在、自動体位変換機能付きエアマットなど、体位変換が機械だけで行えるデバイスも販売されています。

③除圧
褥瘡の予防には除圧が大切です。これは体圧測定器というツールで可視化できます。
・数値目標:40mmHg以下

体圧を減らし、原因を除去しなければ、褥瘡にいろんな処置を施したり、薬を塗っても治りません。
車いす使用時のポジショニングには「90度ルール」があり、股関節、膝関節、足関節を90度にするのが一番適していると言われています。

拘縮や麻痺でこの体位が取れない場合は、様々なポジショニングの枕、座面に使うクッションなどを使って、この姿勢をできるだけ保持します。

ガイドライン上は15~30分ごとにヒップアップして除圧することが推奨されています。

Point:
医師、看護師、介護士みなで患者・ご家族への教育をし合いながら情報を共有し、クライアントの褥瘡を治す、または予防する取り組みが重要です。

在宅における褥瘡ケアのポイント(介護福祉士の実践)

予防の視点は、すでに褥瘡がある方の改善にもつながります。

予防の視点具体的なケア・観察ポイント
圧の軽減・同じ姿勢が続いていないか
・骨が出ている部位(仙骨・踵・大転子)の確認
体位変換・定期的な姿勢変更(時間:   )
・クッション・タオルでの調整
ずれ・摩擦・引きずらない
・衣類・シーツのシワ確認
皮膚の清潔・汚染後すぐ対応
・洗いすぎない
保湿・乾燥部位への保湿剤使用
・毎日のスキンケア
湿潤対策・失禁・発汗の放置をしない
・おむつ内環境の確認
栄養・水分・食事量、排泄量
・水分摂取不足の兆候
早期対応・赤みが消えない
・創がある

褥瘡を発見したときの対応のフロー

  • 発見・除圧
    「あれ?」と思ったら、迅速な報告はもちろん、観察して原因を考え、ただちに除圧!
  • 観察
    傷の状態を言語化して記録に。
    皮膚の色(赤み・紫)、肩さ・熱感、痛み・かゆみ、浸出液・臭い、周囲の皮膚状態など
  • 保清
    清潔を保ち、汚染があれば洗浄、水分を拭きとりましょう。
    *創部は触らない!薬剤も塗らない!
  • 報告
    速やかに「いつ、どこに、どのような状態か」を看護師に報告してください。
    *自己判断しない
  • 記録・共有

Point:
迷ったら「触らず、除圧して、すぐ報告」が鉄則です。

報告・記録の実際

  • 5 W1Hで報告していきましょう
    ・いつ、どこで、どんな状態の傷が見つかって、どんな対応をしたのか
  • 記録すべき必須事項
    ・発見日時、発見時の体位、部位・大きさ、皮膚の状態
  • 具体的な記録例
    「排せつ介助時、右仙骨部に500円玉大の赤みを発見。熱感があったので30分除圧したが、赤みは消退せず。浸出液なし。

    周囲皮膚に汚れがあり、微温湯で洗浄して水分を拭き取り。

    看護師の○○さん、訪問看護ステーション○○へ報告し、体位変換を2時間ごとにするように指示を受けて実施」

<メッセージ>

介護福祉士、アテンダントの皆さまは、クライアントの日常生活を支える褥瘡予防の最前線に立つ存在です。

特別な技術だけでなく、日々の「観察力」、そして伝える「行動力」こそが、最大の予防ケアになります。

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