介護の知識シリーズ
《Ⅰ》医療的ケアの基礎知識 【喀痰吸引とは?】

介護の知識をシリーズで発信していきます。
このページは《Ⅰ》医療的ケアの基礎知識の中の【喀痰吸引とは?】のページです。
医療的ケアの基礎知識についての目次は末尾にあります。

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喀痰吸引とは?

喀痰(かくたん)吸引とは、“たん”の吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)のことです。吸引装置と吸引カテーテルを用いて、“たん”を体外に吸い出します。

ただ、一般的に言われるたんと喀痰は言葉の意味合いが違い、喀痰には、唾液(つば)、鼻汁(はなみず)、狭い意味での喀痰(肺・気管などから排出される老廃物や小さな外気のゴミを含む)の3つが含まれます。

なぜ喀痰吸引が必要なのか

私たちは、鼻や口から空気と一緒に、外気にあるほこりなどを吸い込んでいます。それを、鼻毛などのフィルターで取り除きながら肺へと空気を送り込みます。その過程で空気は気管を通りますが、気管の表面は短い毛で覆われ、常に分泌された粘液で潤っている状態が保たれるようになっているため、フィルターを通り抜けた異物が気管の奥に入らないように、ここに付着します。

私たちは、鼻や口から空気と一緒に、外気にあるほこりなどを吸い込んでいます。それを、鼻毛などのフィルターで取り除きながら肺へと空気を送り込みます。その過程で空気は気管を通りますが、気管の表面は短い毛で覆われ、常に分泌された粘液で潤っている状態が保たれるようになっているため、フィルターを通り抜けた異物が気管の奥に入らないように、ここに付着します。

こうした異物を含んだ粘液は、気管を覆う短い毛が動くことにより、くしゃみや咳払いで体外に排出されたり、鼻水や唾液でも体の外へ出ていきます。

しかし、気管を潤している粘液や分泌物は、1日に、1~1.5Lあると言われており、そのうち、くしゃみなどで体外に排出されるのはごくわずかで、ほとんどを無意識に胃の中に飲み込んでいると言われています。

嚥下機能の低下や気管切開等の要因により、自力で喀痰を排出できない、または排出が難しい方がいらっしゃいます。体内に貯留する喀痰をそのままにしておくと、誤嚥や呼吸困難、気道閉塞などの重大なリスクが生じます。そのため、何らかの方法で体外に排出する必要があり、そこで用いられるのが喀痰吸引です。

喀痰吸引とは、何らかの原因で体内に貯留している喀痰を自力で出すことが困難な場合に、吸引装置を使用し喀痰を体外に吸い出すことを言います。

いつ吸引すればいいの?

吸引するタイミングとしては、

  1. 利用者がナースコールや表情で希望されたとき
  2. 利用者から痰がらみのゴロ音が聞こえたり、口腔内から唾液があふれたりなど、介護職等が医療的な視点から必要だと判断したとき

このような時には利用者に説明し、同意を得た上で(インフォームド・コンセント)吸引を実施します。

利用者の意図や希望を無視し、自分の時間が空いたから今のうちに吸引しよう、勤務交代のタイミングで次に勤務する人の仕事を減らすために吸引しようなどという動機で吸引してはいけません。

喀痰吸引は、呼吸を楽にし、危険を回避するために行うものですが、その最中に反射的に一瞬呼吸を止めることになるなど、利用者の身体に同時に負担もかかります。

医師の指示に基づいて吸引しますが、指示の範囲内で、吸引するタイミング、吸引時間の長さの見極めを、その日の利用者の体調等に合わせて行う感覚も養っていただきたいと思います。

喀痰は体調管理にも重要

通常の喀痰の性状は、無色透明からやや白っぽく、においはなく、やや粘り気があります。しかし、喀痰が黄色や緑色っぽい時や極端に量が多い場合は感染症を疑います。また、粘り気が強く硬い時は脱水を疑います。

このように吸引で取れた喀痰を観察することで、その人の体調を知ることができます。ただ吸引するのではなく、喀痰の性状を観察し記録に残すことは、利用者の体調管理をしていく上で大切なことです。

感染予防

喀痰吸引は医療的ケアであることから、感染予防も実施していく必要があります。

医療職が医療的ケアを行う際の感染予防の考え方で、標準予防策(スタンダードプリコーション)があります。

それは、すべての対象者の血液、体液、喀痰や唾液などの分泌物は、感染の可能性のある物質として取り扱うこととし、手洗いや手袋、マスクなどの感染防護用具を適宜使用して、感染拡大を防ごうという考え方です。
簡単に言うと、汗以外の物質は感染物質として捉えていくということになります。

介護職も医療的ケアを実施する際は、介護者から利用者に感染させない、利用者から感染物質をもらわないように、標準予防策を守り、感染対策に取り組んでいくことが必要です。

喀痰吸引まとめ

喀痰吸引はたんを取り除き、呼吸を楽にするために行いますが、4㎜ほどのチューブを鼻に入れることや、吸引中は一時的に呼吸を止める状態になるため、不快感やストレス、苦痛等のデメリットも伴います。

それでも、利用者は私たち介護者を信頼し、喀痰吸引を実施することを承諾してくださいます。
その信頼に謙虚に誠実に応えるために、適切なタイミングで、的確な手技を行い、安全にそして清潔に1回の喀痰吸引で十分な量を吸引することが大切です。

とはいえ、吸引時間を長くすることは呼吸状態を悪化させることにつながるため避けなければなりません。
1回で十分な量を吸引するには、吸引カテーテルを回転させながら吸引したり(吸引効率のアップにつながります)、痰がたまりズルズルと吸引音がするところに時間をかけ、音がしないところはさっと済ませるなど、必要な箇所に吸引時間を使うなどがあります。

それぞれの利用者に合った方法を模索しながら、よりよい医療の提供を目指してほしいと思います。

筆者紹介

瀬絵梨


3歳より、夢は看護師!と心に決め、高校より看護学校(5年一貫教育衛生看護科)に通い、2008年正看護師になる。

資格取得後は、総合病院の救急外来や訪問看護、検査等の経験を経て、介護職の方への研修講師として活動。

土屋ケアカレッジでは、分かりやすい!をモットーに、生徒さんが支援先で困らないよう、実践的な医療の側面からの知識提供に努める。

統合課程、新人教育、実務者研修、実地研修の指導看護師等を担当中♪

監修

下岳彦

順天堂大学 医学部&スポーツ健康科学部 非常勤講師

1996年、順天堂大学医学部在学時にラグビー試合中の事故で脊髄損傷となり、以後車いすの生活となる。

1998年、医師免許取得。順天堂医院精神科にて研修医修了後、ハワイ大学(心理学)、サンディエゴ州立大学大学院(スポーツ心理学)に留学。

2011年、順天堂大学大学院医学研究科にて自律神経の研究を行い、医学博士号取得。

2012年より、順天堂大学 医学部 非常勤講師。

2019年より、順天堂大学 スポーツ健康科学部 非常勤講師を併任。

医学、スポーツ心理学、自律神経研究、栄養医学、および自身の怪我によるハンディキャップの経験に基づき、パフォーマンスの改善、QOL(Quality of Life:人生の質)の向上、スポーツ観戦のバリアフリーについてのアドバイスも行っている。

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