介護の知識をシリーズで発信していきます。
このページは《Ⅰ》医療的ケアの基礎知識の中の【喀痰吸引②鼻腔内吸引とは?】のページです。
医療的ケアの基礎知識についての目次は末尾にあります。

喀痰吸引②鼻腔内吸引とは?

鼻腔内吸引とは、鼻腔内にたまった鼻汁(はなみず)を、吸引装置と吸引カテーテルを用いて体外に吸い出すことを言います。

吸引できる範囲

医療職以外の資格を有する介護職が鼻腔内を吸引する場合、吸引してもよい範囲が定められていて、それは咽頭より手前を限度としています。

鼻腔は空気の通り道で、まず左右を隔てる鼻中隔があり、それにより右の鼻孔と左の鼻孔に分けられています。鼻中隔が左右どちらかに曲がっていると、片方の鼻孔が狭くなり吸引しづらくなります。

また鼻の中には、上・中・下鼻甲介(びこうかい)というひだがあり、吸い込んだ空気から異物を取り除き、適度に空気をあたため加湿をする働きがあります。

ここは、血管が多い粘膜で、出血しやすいため、吸引の際は吸引カテーテルが当たらないように挿入していく必要があります。

鼻腔は、鼻孔開口部から耳たぶくらいで約12㎝程度の長さと言われています。

そのため鼻腔内の吸引をする際に挿入できる吸引カテーテルの深さは、体格にもよりますが最大で約12㎝前後となります。実際は、医師の指示書に書かれた挿入長になります。

鼻腔内の吸引時の注意点

注意点①操作方法

鼻腔の粘膜はデリケートで出血しやすい場所であるため、安全かつ十分に喀痰を吸引するためには、吸引カテーテルの操作方法にコツがいります。

(1)まず、粘膜に吸い付かないように、吸引カテーテルの根元を指で折り、喀痰を吸えない状態を作ります。

(2)その状態で、吸引カテーテル先端から10㎝のところを鉛筆を持つように持ち、頭の方向に1~2㎝程度挿入します。




(3)次に手の甲を返し、吸引カテーテルを下方向に変え、鼻腔の底を這わせるように咽頭の手前まで挿入します。手の甲を返さずに挿入し続けると、鼻甲介にあたり、痛みや鼻出血を起こすため注意が必要です。




(4)吸引カテーテルが奥に到達したら、折り曲げていた根元から指をはなし、喀痰を吸える状態にして吸引を開始します。そして、指示された吸引時間以内に吸引カテーテルを体外に出し、吸引を終えます。

注意点②吸引にかける時間と回数

吸引中は呼吸がしづらい状態になるため、息が苦しくなることは容易に想像できます。医師の指示書に吸引秒数が記入されていなくても、1回の長時間の吸引は避け、10~15秒以内にしましょう。

また吸引カテーテルの先端には3つの孔が空いています。効率よく行うために、吸引カテーテルをこよりをよるように左右に回転させながら抜いてきます。

1回で十分に吸引できなかった場合は、再度吸引を実施しますが、何回も息を止めて吸っての繰り返しとなり、息が苦しくなることもあります。
一度の吸引は2~3回までとし、呼吸の音を聞き喀痰の貯留があるか、SpO2の数値はどうか、取れた喀痰などを観察し、再度吸引が必要かを考えることが大切です。

利用者の違和感への対応

喀痰がとり切れていない場合は、呼吸を整えて再度吸引するか、医療職者に相談します。
一方、喀痰がとり切れているにもかかわらず、利用者自身の感覚としてもっと吸引してほしいと言われることもあります。

繰り返し吸引を実施した直後は、カテーテルが入っていた違和感も重なり、鼻にまだ何かが残っているような異物感があって気にされることもあります。利用者として、そこに異物があって取らないと、これからもっと呼吸が苦しくなるかもしれないという、焦燥感や不安がある場合もあります。

そんな気持ちにも寄り添い、吸引をして痰の貯留音がすでに無くなっていることやSpO2の数値など客観的な事実もお伝えして、「充分に酸素が吸えているので安心ですよ」などと優しく丁寧な言葉がけをしていくことも必要です。

筆者紹介

瀬絵梨


3歳より、夢は看護師!と心に決め、高校より看護学校(5年一貫教育衛生看護科)に通い、2008年正看護師になる。

資格取得後は、総合病院の救急外来や訪問看護、検査等の経験を経て、介護職の方への研修講師として活動。

土屋ケアカレッジでは、分かりやすい!をモットーに、生徒さんが支援先で困らないよう、実践的な医療の側面からの知識提供に努める。

統合課程、新人教育、実務者研修、実地研修の指導看護師等を担当中♪

監修

下岳彦

順天堂大学 医学部&スポーツ健康科学部 非常勤講師

1996年、順天堂大学医学部在学時にラグビー試合中の事故で脊髄損傷となり、以後車いすの生活となる。

1998年、医師免許取得。順天堂医院精神科にて研修医修了後、ハワイ大学(心理学)、サンディエゴ州立大学大学院(スポーツ心理学)に留学。

2011年、順天堂大学大学院医学研究科にて自律神経の研究を行い、医学博士号取得。

2012年より、順天堂大学 医学部 非常勤講師。

2019年より、順天堂大学 スポーツ健康科学部 非常勤講師を併任。

医学、スポーツ心理学、自律神経研究、栄養医学、および自身の怪我によるハンディキャップの経験に基づき、パフォーマンスの改善、QOL(Quality of Life:人生の質)の向上、スポーツ観戦のバリアフリーについてのアドバイスも行っている。

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