経管栄養①胃ろうまたは腸ろう

介護の知識シリーズ《Ⅰ》医療的ケアの基礎知識|第7回/全8回

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胃ろう・腸ろうによる経管栄養は、一定の研修と認定を受けた介護職員などが行える医療的ケアの一つです。胃ろうカテーテルの種類や栄養剤の違いを知っておくと、利用者一人ひとりに合ったケアを理解しやすくなります。

この記事のポイント

  • 胃ろう・腸ろうは、お腹の穴からチューブで胃や腸に栄養剤を入れる方法です
  • 胃ろうカテーテルは主に4種類。バルーン型とバンパー型で交換の目安が違います
  • ろう孔の状態の確認は医療職の役割。介護職員は毎回の観察と報告を担います

胃ろう・腸ろうとは?

胃ろう・腸ろうによる経管栄養とは、お腹に小さな穴(ろう孔)を作ってチューブを通し、胃や腸に直接栄養剤を入れて栄養をとる方法です。

胃ろう・腸ろうは、口から十分に食べることが難しい状態が長く続く場合などに選ばれることがある方法です。胃ろう・腸ろうによる経管栄養は、一定の研修と認定を受けた介護職員などが行える、5つの医療的ケアの一つです。経管栄養そのものの基本は、経管栄養とは?で解説しています。

出典:e-Gov法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則」第1条/厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養

胃ろうの特徴とメリット

胃ろうは、顔にチューブがなく外見がすっきりしていること、抜けにくいこと、交換の間隔が長いことが大きなメリットです。

胃ろうを作る方法としては、胃カメラ(内視鏡)を使ってお腹から胃に管を通す、経皮内視鏡的胃ろう造設術(PEG:ペグ)が一般的です。

胃ろうには、皮膚のトラブルなどの合併症のリスクもありますが、鼻からチューブを入れる経鼻経管栄養と比べて、次のようなメリットがあります。

メリット①外見がすっきりする

胃ろうのイメージ

鼻からチューブが出て顔にテープで固定されていると、外見上、重い病気のような印象を与えやすくなります。胃ろうは顔にチューブがないため、外見がすっきりすることが大きなメリットです。

メリット②抜けにくい

経鼻経管栄養のチューブはテープで顔に固定するため、比較的抜けやすいのが難点です。胃ろうはお腹の中でしっかり固定されているため、抜けにくいのが特徴です。

メリット③交換の間隔が長い

経鼻経管栄養のチューブは1〜2週間ごとの交換が必要とされています。胃ろうのカテーテルは、種類によって1〜2カ月、または4〜6カ月程度に一度の交換が目安です(くわしくは後ほど紹介します)。

出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養

このようなメリットがある胃ろうですが、体の状態によっては、胃ろうを作ることが難しい場合もあります。そのような場合は、腸ろうを作ったり、経鼻経管栄養が行われたりします。

腸ろうの特徴

腸ろうは、お腹の穴から小腸にチューブを通す方法です。胃ろうより細く長いチューブになるため、詰まらないような管理が必要です。

腸ろうのイメージ

腸ろうも、顔にチューブがなく外見がすっきりするという点では、胃ろうと同じです。一方で、厚生労働省の研修テキストでは、腸ろうは胃ろうより細く長いチューブになるため、詰まらないようにする管理が必要とされています。

また、栄養剤が胃を通らずに直接小腸に入るため、注入の速度や量は、医師の指示を必ず守ります。どのような方に腸ろうが適しているかは、医師が体の状態を見て判断します。

出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養

胃ろうカテーテルの種類と交換時期

胃ろうカテーテルは、体の外の形(ボタン型・チューブ型)と、胃の中の形(バルーン型・バンパー型)の組み合わせで4種類に分けられます。

胃ろうカテーテルは、体の外に見えている部分の形と、胃の中で抜けないように止めるストッパーの形で分類されます。

ボタン型の胃ろうカテーテルのイメージ
分類種類特徴
体の外の形ボタン型お腹の表面にボタンのような部分だけが出ているタイプ。目立ちにくいのが特徴です。
体の外の形チューブ型体の外にチューブが長くついているタイプです。
胃の中の形バルーン型胃の中で風船をふくらませて止めるタイプ。交換は1〜2カ月に一度が目安で、医師が行います。
胃の中の形バンパー型胃の中で硬いストッパーで止めるタイプ。交換はおよそ4〜6カ月に一度が目安(資料によっては4〜5カ月)で、医師が行います。

これらを組み合わせて、ボタン型バルーン、ボタン型バンパー、チューブ型バルーン、チューブ型バンパーの主に4種類があります。どのカテーテルを使うかは、利用者の体の状態などをもとに医師が決めています。なお、バルーン型の風船の中の水の入れ替えは看護師が行います。

出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養

栄養剤の種類

胃ろうから入れる栄養剤には、液体栄養剤と半固形栄養剤があります。どちらをどれくらい使うかは医師が決めます。

液体栄養剤

液体栄養剤は、医療保険が適用されるものがあり、利用者の経済的な負担が軽いのが特徴です。点滴のボトルのような容器に入れ、チューブで少しずつ注入していきます。厚生労働省の研修テキストでは、胃ろうを作った直後は1時間に100ml、嘔吐などがなければ1時間に200ml程度の速度で注入することが目安として示されています。実際の速度は、医師の指示などで決められた範囲で調整します。

液体栄養剤を注入する様子

注入中や注入後は、逆流を防ぐために上半身を起こした姿勢を保ちます。姿勢の角度などは、経管栄養とは?で解説しています。

出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養

半固形栄養剤

半固形栄養剤は、ある程度の固さがある栄養剤です。厚生労働省の研修テキストでは、消化吸収の面や安全面、下痢の起こりにくさ、注入の手軽さ、注入時間の短さといった点で、液体栄養剤より優れているとされています。300〜600mlを15分程度の時間で注入するとされています。

注入の方法には、カテーテルチップ型のシリンジ(注射器のような器具)で押し込む方法や、バッグに入れて圧をかけて注入する方法があります。粘り気が強いため、主に胃ろうで使われます。

カテーテルチップ型シリンジで注入する様子
加圧バッグを使って注入する様子

出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養

ミキサー食を注入する場合も

ミキサーにかけた食事を胃ろうから注入するケースもありますが、詰まりやすさなどに注意が必要です。どのような栄養剤や食事を、どのくらいの量で注入するかは医師の判断のもとで決められるため、介護職員が勝手に変更することはできません。医師の指示書に従って、食事の提供をしていきましょう。

注入前後の観察と注意点

胃ろう・腸ろうでは、毎回の注入の前後にチューブやろう孔のまわりを観察し、異常があれば医療職に報告することが大切です。

胃ろう・腸ろうの状態に問題がないかの確認は、医師または看護職員が行うことになっています。そのうえで、介護職員は注入のたびに次のような点を観察しましょう。

  • チューブに破損や抜けがないか、固定の位置がいつもと変わっていないか
  • ろう孔のまわりの皮膚が赤くなったり、じくじくしたりしていないか
  • 栄養剤や胃液が漏れていないか

ろう孔のまわりに赤みやじくじくなどの炎症がなければ、日常的に特別な処置は必要ないとされています。異常が見られた場合は、すぐに医療職に連絡して対応してもらいましょう。

また、注入が終わったあとは、チューブの中に栄養剤が残って詰まらないよう、シリンジで白湯を流します。半固形栄養剤は粘り気が強く詰まりやすいため、特に注意が必要です。

出典:厚生労働省「今回の法改正で実施可能となった医行為の範囲」(施行通知 第2-1 喀痰吸引等の範囲)/厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養/厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト 第Ⅲ章 喀痰吸引等に関する演習」

胃ろう・腸ろうがあっても、その人らしい生活を

胃ろうや腸ろうで栄養をとっている方の生活の様子は、一人ひとり違います。決めつけずに、その人らしい生活を支える視点を持ちましょう。

胃ろうや腸ろうで食事をしている方には、ずっと横になって過ごしているというイメージを持たれやすいかもしれません。でも、実際の生活の様子は人それぞれです。顔のチューブがないことで外見を気にせず過ごせたり、半固形栄養剤で注入の時間が短く済んだりと、生活のしやすさにつながる面もあります。

また、一度胃ろうを作ったからといって、口から食べられなくなると決まるわけではありません。胃ろうを作るきっかけになった症状が改善した場合などには、医師の判断で口からの食事を再開できることもあります。

食事は栄養をとるためだけのものではなく、人生の楽しみでもあります。胃ろう・腸ろうで食事をしている方にとっても、その時間が心地よいものになるよう、ていねいなケアを心がけましょう。

胃ろう・腸ろうの経管栄養を行うための条件

胃ろう・腸ろうによる経管栄養は医行為にあたるため、介護職員が行うには研修・認定・事業者登録などの条件を満たす必要があります。

実務者研修の修了だけでは、医療的ケアは行えません

実務者研修や基本研修を修了しただけでは、現場で喀痰吸引や経管栄養を行うことはできません。業務として行うには、次の4つがそろう必要があります。

  1. 基本研修を修了する
    実務者研修の「医療的ケア」(講義50時間+演習)を修了している場合、喀痰吸引等研修の基本研修は履修免除の対象になります。
  2. 実地研修を受ける
    指導看護師などの指導と評価を受けながら、実際の利用者に対して所定の回数を行います。
  3. 都道府県の認定を受ける
    「認定特定行為業務従事者」として都道府県に申請し、認定証の交付を受けます。
  4. 勤務先が事業者登録をしている
    喀痰吸引等を行う事業所は、事業所ごとに都道府県へ登録している必要があります(登録特定行為事業者)。

介護福祉士の場合は、実地研修を修了したあとに社会福祉振興・試験センターへ登録し、登録証に行為が付記される流れになります。この場合、事業所は「登録喀痰吸引等事業者」の登録が必要です。なお、認定証を持っている介護福祉士は、認定特定行為業務従事者として行うこともできます。

出典:厚生労働省「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度について」/千葉県「喀痰吸引等研修 登録研修機関」/宮城県「介護職員等による喀痰吸引等の制度について」/大阪府「介護福祉士が喀痰吸引等を行うまでの流れ」

よくある質問

Q. 胃ろうのまわりが赤くなっているときは、どうすればいいですか?

A. ろう孔のまわりの赤みやじくじくは、炎症などのサインの可能性があります。様子を記録し、すぐに看護職員などの医療職に報告しましょう。消毒などの処置が必要かどうかは、医療職が判断します。

Q. 胃ろうカテーテルが抜けてしまったら、どうすればいいですか?

A. すぐに看護職員や医師に連絡し、事前に決められている対応手順に従います。胃ろうカテーテルの交換や入れ直しは医師が行うもので、介護職員が行うことはできません。

Q. 液体栄養剤と半固形栄養剤は、どちらがいいのですか?

A. どちらにも特徴があり、利用者の体の状態などに合わせて医師が決めます。液体栄養剤は医療保険が適用されるものがあり経済的な負担が軽く、半固形栄養剤は注入時間が短いことなどが特徴です。介護職員の判断で変更することはできません。

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※修了後に現場で医療的ケアを行うには、実地研修や認定などの手続きが別途必要です。

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