介護の知識シリーズ《Ⅰ》医療的ケアの基礎知識|第6回/全8回
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経管栄養は、喀痰吸引と並んで、一定の研修と認定を受けた介護職員などが行える医療的ケアの一つです。経管栄養の種類や、誤嚥性肺炎を防ぐためのポイントを知っておくと、胃ろう・腸ろうや経鼻経管栄養の手順も理解しやすくなります。
この記事のポイント
- 経管栄養は、チューブで胃や腸に直接栄養剤を入れて栄養をとる方法です
- 消化管が働いている場合は、静脈栄養より体の自然な働きに近い方法です
- 誤嚥性肺炎を防ぐため、注入中の姿勢と注入速度、観察がとても大切です
経管栄養とは?
経管栄養とは、口から食べることができない、または口からだけでは十分な量をとれない方が、チューブを使って胃や腸に直接栄養剤を入れ、栄養状態を保つための方法です。

人は、食べ物から栄養や水分をとって生きています。ところが、さまざまな理由で口から十分に食べられなくなることがあります。たとえば、脳梗塞などによる嚥下障害(うまく飲み込めないこと)や、認知症による食べることの障害、誤嚥性肺炎を繰り返すことなどです。そのような場合でも、何らかの方法で栄養をとる必要があります。
出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養
経管栄養の種類
経管栄養には、鼻からチューブを入れる経鼻経管栄養と、お腹に作った穴からチューブを入れる胃ろう・腸ろうがあります。
介護職員が行える経管栄養は、「胃ろう又は腸ろうによる経管栄養」と「経鼻経管栄養」の2つです。それぞれの特徴は、次のとおりです。
| 方法 | 特徴 | くわしい解説 |
|---|---|---|
| 胃ろう | お腹に小さな穴(ろう孔)を作り、胃にチューブを通して栄養剤を入れます。顔にチューブがなく、抜けにくいのが特徴です。 | 胃ろう・腸ろう |
| 腸ろう | お腹の穴から小腸にチューブを通します。胃ろうより細く長いチューブになるため、詰まらないような管理が必要です。 | 胃ろう・腸ろう |
| 経鼻経管栄養 | 鼻からチューブを入れて胃まで通します。手術が不要な一方、チューブが抜けやすく、1〜2週間ごとの交換が必要です。 | 経鼻経管栄養 |
出典:e-Gov法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則」第1条/厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養
静脈栄養との違い
消化管が正常に働いている場合は、静脈栄養よりも経管栄養のほうが、体の自然な働きに近い方法とされています。
口から食べられない場合の栄養のとり方には、経管栄養のほかに静脈栄養があります。厚生労働省の研修テキストでは、消化管が正常であれば、静脈栄養よりも経管栄養のほうが生理的で、多くの利点を持っているとされています。経管栄養では消化管が働くため、消化管の運動や腸の免疫の働きを保ちやすいからです。一方、消化管に異常がある場合などは、静脈栄養が必要になります。
出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養
静脈栄養には、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。風邪をひいたときなどに受ける点滴のように、腕などの細い静脈から栄養(輸液)を入れるのが末梢静脈栄養です。細い血管に濃い輸液を入れると、痛みや血管の炎症を起こしやすくなります。そのため、長い期間にわたって高カロリーの輸液が必要な場合は、心臓に近い太い静脈にカテーテルを入れる中心静脈栄養が行われます。中心静脈栄養のカテーテルを入れる処置は、医師が行います。
なお、静脈栄養は介護職員が行える医療的ケアには含まれていません。
経管栄養のリスクと予防のポイント
経管栄養で特に注意したいリスクの一つが、栄養剤が逆流して起こる誤嚥性肺炎です。姿勢と注入速度に気をつけて予防します。
経管栄養を行っている方は、栄養剤が胃から食道へ逆流し、気管に垂れ込むことで、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。誤嚥を防ぐこと、そして誤嚥したときに早く気づいて対応することが大切です。
出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養
予防のポイント①注入するときの姿勢
私たちがふだん座って食事をするのは理にかなっていて、上半身を起こした姿勢のほうが、栄養剤が逆流しにくく、胃から十二指腸への流れもスムーズになります。
厚生労働省の研修テキストでは、注入するときはベッドの頭側を30〜60度程度上げることが基本とされています。利用者の病気や状態によって適した角度は違うため、医師の指示や看護職員の指導に従いましょう。また、注入が終わったあとも、しばらくは上半身を起こした姿勢を保ちます。ベッドを平らに近づけるほど、げっぷや咳込みをきっかけに嘔吐しやすくなり、誤嚥にもつながります。
出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養/厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト 第Ⅲ章 喀痰吸引等に関する演習」
予防のポイント②注入速度

液体の栄養剤は、ボトルに入れてチューブで胃や腸に注入し、クレンメという器具で滴下の速度を調節します。注入の速度は、医師の指示などで決められた範囲の中で調整します。
注入の速度が速いと、逆流による嘔吐などを起こすことがあります。時間に間に合わせようとして、途中で速度を急に上げることがないよう、注入中の速度を管理しましょう。姿勢を変えると滴下の速度も変わるため、姿勢を整えたあとに速度を確認することも大切です。
出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養/厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト 第Ⅲ章 喀痰吸引等に関する演習」
注入中・注入後の観察
注入中はその場を離れず、呼吸や顔色、表情などに変化がないかを観察します。異常があれば注入を止めて医療職に連絡します。
注入中の体位変換や吸引、咳込みなどは、栄養剤の逆流や嘔吐のきっかけになります。こうしたことがあったあとは、逆流が起きていないかを確かめるために、呼吸の様子や表情、顔色を観察しましょう。
嘔吐や腹痛、水のような便などが見られた場合や、いつもと様子が違う場合は、注入をいったん止めて、すぐに看護職員などの医療職に連絡します。
出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養
口腔ケアも大切です
口から食べていなくても、歯みがきなどの口腔ケアは欠かせません。
経管栄養では口から食べていないため、口腔ケアは必要ないと思われるかもしれません。しかし、口から食べないと、口の中をきれいにする働きのある唾液の分泌が減り、細菌が増えやすくなります。その汚れた唾液を誤嚥すると、誤嚥性肺炎にもつながります。
厚生労働省の研修テキストでも、経口摂取をしていなくても歯みがきなどの口腔ケアは必要とされています。肺炎の予防のためにも、口腔ケアをていねいに行いましょう。
出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修テキスト(第三号研修)」経管栄養
経管栄養は「食事」の時間
経管栄養は、利用者にとって大切な「食事」の時間です。安全に、心地よく過ごしてもらえるよう心がけましょう。
食事は人生の楽しみの一つで、みなさんもおいしいものを食べると幸せを感じますよね。食事の方法が変わることは、利用者にとって大きなストレスになることもあります。
だからこそ、経管栄養の時間を「作業」ではなく「食事」として大切にしたいものです。声かけをしながら、安全に、そして利用者に合った方法で医療的ケアを提供していきましょう。
経管栄養を行うための条件
経管栄養は医行為にあたるため、介護職員が行うには研修・認定・事業者登録などの条件を満たす必要があります。
また、胃ろう・腸ろうの状態に問題がないかの確認や、経鼻経管栄養のチューブが正確に胃に入っていることの確認は、医師または看護職員が行うことになっています。
出典:厚生労働省「今回の法改正で実施可能となった医行為の範囲」(施行通知 第2-1 喀痰吸引等の範囲)
実務者研修の修了だけでは、医療的ケアは行えません
実務者研修や基本研修を修了しただけでは、現場で喀痰吸引や経管栄養を行うことはできません。業務として行うには、次の4つがそろう必要があります。
- 基本研修を修了する
実務者研修の「医療的ケア」(講義50時間+演習)を修了している場合、喀痰吸引等研修の基本研修は履修免除の対象になります。 - 実地研修を受ける
指導看護師などの指導と評価を受けながら、実際の利用者に対して所定の回数を行います。 - 都道府県の認定を受ける
「認定特定行為業務従事者」として都道府県に申請し、認定証の交付を受けます。 - 勤務先が事業者登録をしている
喀痰吸引等を行う事業所は、事業所ごとに都道府県へ登録している必要があります(登録特定行為事業者)。
介護福祉士の場合は、実地研修を修了したあとに社会福祉振興・試験センターへ登録し、登録証に行為が付記される流れになります。この場合、事業所は「登録喀痰吸引等事業者」の登録が必要です。なお、認定証を持っている介護福祉士は、認定特定行為業務従事者として行うこともできます。
出典:厚生労働省「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度について」/千葉県「喀痰吸引等研修 登録研修機関」/宮城県「介護職員等による喀痰吸引等の制度について」/大阪府「介護福祉士が喀痰吸引等を行うまでの流れ」
よくある質問
Q. 経管栄養の栄養剤は、温めたほうがいいですか?
A. 厚生労働省の研修テキストでは、栄養剤の温度は常温から人肌くらいとされていますが、医師の指示や家族の方法に従うこととされています。利用者ごとの決まりを確認してから準備しましょう。
Q. 注入中に利用者が咳込んだときは、どうすればいいですか?
A. 咳込みは栄養剤の逆流や嘔吐のきっかけになるため、注入をいったん止めて、呼吸の音や顔色、表情を観察します。苦しそうな様子や、いつもと違う様子があれば、すぐに看護職員などの医療職に連絡します。
Q. 経管栄養をしていても、口から食べることはできますか?
A. 利用者の状態によっては、医師の判断で口からの食事と組み合わせる場合もあります。口から食べてよいか、どのような形態の食べ物ならよいかは、医師や看護職員などの医療職が判断します。介護職員の判断で食べ物を口に入れることはしないようにしましょう。


