介護業界で人気のキャリアアップルートといえば、国家資格である介護福祉士です。
介護福祉士になることで、一般的な介護職ではなく、「国家資格を持つ医療関係者」という位置づけにキャリアアップでき、給与面で優遇されたり、業務の幅が広がったりと、メリットも多くあります。
そして、その介護福祉士になるためには介護福祉士国家試験に合格する必要があります。
今回は、「介護福祉士国家試験の合格率や難易度はどれくらいなのか?」という疑問にお答えしながら、合格するための勉強法を解説していきます。
介護福祉士国家試験の概要
介護福祉士国家試験とは、国家資格である介護福祉士になるための試験です。
介護福祉士は、数十種類ある介護資格の中で唯一の国家資格。介護職のキャリアパス上位にあたり、介護資格の中では難易度はやや高めです。
筆記試験と実技試験があります。
受験資格
受験資格は、国籍、性別、年齢、学歴等の制約はありません。
しかし、以下のいずれかの条件を満たしていることが受験資格として必要となります。
- 実務経験が3年以上+実務者研修修了
- 専門学校や福祉系の高校などを含む養成学校を修了
- EPA(経済連携協定)で来日+実務経験3年以上
実技試験の免除対象
介護福祉士の資格制度改正により、2017年実施の介護福祉士国家試験以降、受験資格のあるほとんどの人は実技試験の免除対象となっています。
実技試験を受けなければならないのは、次のいずれかに該当する場合のみです。
①福祉系高校に2008年度以前に入学し旧カリキュラムで学んで卒業した人、あるいは、特例高校に2009年度以降に入学し、必須単位を取得して卒業した後、9か月以上の介護等実務を経験した人のうち、介護技術講習を修了していない人
②経済連携協定(EPA)ルートで介護技術講習を修了していない人、あるいは、実務者研修(EPA介護福祉士候補者)を修了していない人
介護福祉士国家試験は年に1回
介護福祉士国家試験は年に1回実施されます。
2022年度は
筆記試験が令和5年(2023年)1月29日(日)
実技試験は令和5年(2023年)3月5日(日)に実施されます。
2022年度は
筆記試験が令和5年(2023年)1月29日(日)
実技試験は令和5年(2023年)3月5日(日)に実施されます。
年に1回だけの試験ですので、不合格になると次回の受験までまた1年間向き合わなければなりません。
【2022年度介護福祉士国家試験日程】
筆記試験:令和5年(2023年)1月29日(日)
実技試験:令和5年(2023年)3月5日(日)
出題内容と出題形式
介護福祉士国家試験は、「人間と社会」「介護」「こころとからだのしくみ」「医療ケア」の4つの領域の12の科目と総合問題を合わせた計13科目の中から125問出題されます。
1問1点の125点満点で、解答はすべて五肢択一形式です。
試験時間は午前100分、午後120分の合計220分です。
1日がかりの試験ですので、かなりのスタミナが要求されます。
また、実技試験では、実際の介護の現場を想定したシミュレーション試験が行われます。
具体的には、当日渡される課題に沿ってどのような介護を実践するのかを試されます。
介護福祉士国家試験の合格率
介護福祉士国家試験の合格率は例年70%前後となっています。
2022年に実施された第34回介護福祉士国家試験では、受験者数8万3,082人に対し、合格者数は6万0,099人、合格率は72.3%でした。
過去の合格率
過去の合格率の推移を見てみましょう。
いずれも合格率は70%前後で推移しています。
合格率が高く見える理由
介護福祉士国家試験の合格率は約7割ですので、比較的合格率の高い試験に見えます。
しかし、合格率が高く見える理由は、受験資格の厳しさにあります。
介護福祉士国家試験は、誰もが受けられる試験ではなく、介護に携わっている人のみ受験できる試験です。
そのような受験資格を持った方がきちんと勉強し、受験した結果、このような合格率になっているということを忘れてはいけません。
すなわち、介護福祉士国家試験は、決して簡単に合格できる試験ではないということです。
合格基準
介護福祉士国家試験の合格基準は2つあります。
①総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点。
②11の試験科目群すべてに得点すること。
いくら高得点を取っても、試験科目群に1つでも0点の科目があると不合格となります。
合格するためには目安として、筆記試験では81点(65%)前後を目指しましょう。
また、実技試験では60点前後を合格の目安としておくと良いでしょう。
過去の最低合格点
過去の最低合格点は、125点満点に変更された平成28年度以降で見てみると、筆記試験は平成30年度の72点(57%)、実技試験は平成30年(令和元年)の46.67点です。
介護福祉士国家試験の難易度
介護福祉士国家試験の難易度は、他の国家資格と比べると比較的合格しやすい試験です。
しかし、介護資格の中では難易度が高めで、受験対策は必須です。
きちんと対策しなければ不合格になるのは必然です。
また、試験が1年に1回しかないので不合格になるとまた1年間努力しなければなりません。
介護福祉士国家試験の勉強方法
介護福祉士国家試験は、合格率の高い試験に見えますが、少し勉強しただけで誰でも簡単に合格できるような試験ではありません。
出題範囲も広いため、本気で合格を目指すなら万全の受験対策をして臨む必要があります。
独学で合格はできる?
結論から言うと介護福祉士国家試験は独学でも合格できます。
ただし、もちろんメリット・デメリットがあります。
独学のメリットは何と言っても費用が安いことです。
かかる費用は教材費のみです。また、好きな時間に勉強することができ、自由に勉強方法を考えることもできます。
この裏返しがデメリットです。
どのように始めたらよいか分からない、問題が解けないときに質問ができない、という点がデメリットになります。
さらに独学だとモチベーションの維持も困難です。また、スクールに通った方が圧倒的に合格率が高くなります。
しかし、独学かスクールかどちらが良いのかは人それぞれ異なります。
費用や性格などを考慮し、自分に合った環境を選択しましょう。
介護事業所の中には、介護福祉士国家試験資格取得のサポートをしてくれる企業もあります。
具体的には費用を負担してくれたり、業務負担の調整を行ったりしてくれます。
勉強のポイント
介護福祉士国家試験に合格するためには、満点を取る必要はありません。
大切なのは、合格ライン以上の点数を取って確実に資格を取得することです。
そのためには、限られた時間の中で、できる限り効率的な学習を行う必要があります。
以下で勉強のポイントについて説明します。
介護福祉士国家試験合格に向けた勉強のポイントは、アウトプットとインプットです。
試験範囲の全体を大まかに把握した後で、過去問を解き、間違った問題を分析し再度知識をインプットするという流れの繰り返しになります。
このように、アウトプットとインプットを繰り返すことにより、確実に力がつきます。
また、ある程度実力がついたら、模擬試験を受けてみましょう。
本番さながらの環境で問題を解くことによって、時間配分や集中力も身につきます。
そうすることで、気持ち的にも落ち着いて本番を迎えることができます。
合格に必要な勉強時間は約250時間
介護福祉士国家試験合格のためには、平均250時間の勉強が必要と言われています。
6ヶ月前から勉強を始める場合は1日に1.3時間、3ヶ月前から始める場合は1日2.7時間の勉強が必要になります。
自分の生活スタイルを考慮し、遅くとも3ヶ月前には勉強を始めましょう。
時間に余裕を持って6ヶ月前から勉強をスタートさせるのがオススメです。
具体的な勉強スケジュールを決める
介護福祉士国家試験は、出題範囲が広い上に、11科目すべての科目で1問以上正解する必要があります。
全科目をバランス良く勉強できるように最初に具体的な勉強スケジュールを決めましょう。
継続して学べる環境を選ぼう
試験合格のためには、継続して学べる環境を選ぶことが重要です。
独学で勉強が続かないという方は、スクールでの受講をオススメします。
最初の費用はかかりますが、不合格となって1年間資格を取るのが遅れると、結果として損をすることになります。
介護事業所の中には、試験取得をサポートしている企業もあります。
また、これから介護に携わりたいという方は、スクール受講後に同事業所でそのまま就職すると受講費用が実質無料になる場合もあります。
こういった企業を活用することで、より効率的にキャリアアップすることが可能となります。
実技試験対象者は実技対策も必要
実技試験対象者は実技対策が必要です。
具体的には試験直前に試験課題の発表がありますので、しっかりイメージトレ-ニングをしましょう。
試験問題にはパターンがあります。
これまでの実績から見ると80%以上が片麻痺に関する問題です。
片麻痺の対策だけはしっかりとしておきましょう。
モチベーションの維持
モチベーションは、合否に関わる大切な要因です。
継続して勉強できる環境で、仲間がいるとモチベーションが続きやすいです。
また、介護福祉士になる目的を明確にし、試験合格後の自分をイメージすることも効果的です。
介護福祉士国家試験の対策は長期戦になります。
介護福祉士国家試験の一発合格のためには?
介護福祉士は、介護資格の中で唯一の国家資格であり、現場で働く介護士の資格としては最上位の位置付けです。
合格率は70%前後と高いように思われがちですが、簡単に合格できる試験ではありません。
介護福祉士国家試験で一発合格するには、自分に合った環境でモチベーションを維持しながら、計画的かつ効率的に勉強を進めていく必要があります。
独学での資格取得も可能ですが、試験に合格させることを専門に研究している教育機関は、一般の参考書とは一味も二味も違います。
スクールで出題傾向を押さえた試験対策をすることでより効率的に合格への道を進むことができます。
中には、介護事業所が運営するスクールで、費用や業務分担などの面から資格取得を全面的にサポートしてくれる企業もあります。
スクール費用が実質無料になる場合もありますので、うまく活用すると良いでしょう。