実務者研修を修了すると何ができる?3つのことと進路

実務者研修の受講を考えるとき、あるいは修了が近づいてきたとき、気になるのは「これで何ができるようになるのか」ではないでしょうか。450時間の学習を終えた先に、どんな仕事や進路が開けるのか。ここがはっきりしないと、踏み出す決心もつきにくいものです。

この記事では、実務者研修を修了するとできるようになることを3つに整理し、そのうえで修了後の進路の選び方を具体的に見ていきます。あわせて「修了しただけではできないこと」も正直にお伝えします。

この記事のポイント
  • 修了してできるようになるのは「介護福祉士の受験」「サービス提供責任者への応募」「訪問介護の身体介護」の3つです
  • 医療的ケアは基礎を学べますが、修了しただけでは現場で実施できません
  • 進路は施設・訪問・キャリアアップの3方向。どこを目指すかで次の一歩が変わります

実務者研修を修了すると何ができる?

実務者研修を修了することでできるようになるのは、大きく3つです。順に見ていきます。

1|介護福祉士国家試験の受験資格が得られる

介護職で唯一の国家資格である介護福祉士を、働きながら実務経験ルートで受験するには、実務経験3年(従事日数540日)以上に加えて実務者研修の修了が必要です。

この条件は2016年度(第29回試験)から適用されています。それ以前は実務経験だけで受験できましたが、現在は実務経験をいくら積んでも、実務者研修を修了していなければ受験できません。

介護福祉士を取得すると、任される業務の幅が広がり、資格手当の対象になる事業所もあります。実務者研修は、その入り口にあたる研修です。

2|サービス提供責任者になれる

訪問介護事業所には、サービス提供責任者(通称「サ責」)の配置が義務づけられています。利用者40人につき1人以上という基準があるため、事業所ごとに必ず必要なポジションです。

サービス提供責任者は、ケアマネジャーが作成したケアプランをもとに訪問介護計画書を作成し、計画どおりにサービスが提供されるよう調整します。ヘルパーのシフト管理や、利用者・家族との連絡役も担う、事業所の中心的な役割です。

サービス提供責任者の要件は2019年3月末で変わりました

以前は「介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)を修了し、3年以上介護等の業務に従事した者」もサービス提供責任者になれました。しかしこの要件は2018年4月の改正で廃止され、2019年3月末で経過措置も終了しています。

現在サービス提供責任者になれるのは、次のいずれかに該当する方です。

  • 介護福祉士
  • 実務者研修修了者
  • 旧介護職員基礎研修修了者
  • 旧ホームヘルパー1級課程修了者

旧課程はすでに実施されていないため、これから目指すなら実務者研修の修了が事実上の最低ラインです。

3|訪問介護の身体介護を担当できる

訪問介護で利用者の身体に触れる介助(食事介助、入浴介助、移動介助など)を行うには、介護福祉士・実務者研修修了者・介護職員初任者研修修了者のいずれかである必要があります。

訪問介護は基本的に一人で利用者の自宅を訪問し、その場で判断しながら介助します。施設内での勤務とは求められるものが違うため、資格の要件が設けられています。

修了しただけではできないこと

期待とのずれが生じやすい部分なので、はっきりお伝えします。

医療的ケアは「学べる」が「実施できる」ではない

実務者研修には、初任者研修にはない「医療的ケア」の科目があります。喀痰吸引(たんの吸引)と経管栄養について、基礎知識と演習を学びます。

喀痰吸引は、自力で痰を出せない方に対して、口や鼻、気管カニューレから管を通して痰を取り除く行為です。経管栄養は、口から食事が摂れない方に対して、胃や腸のチューブから栄養剤を注入する行為です。いずれも2012年4月施行の法改正により、一定の研修を修了した介護職員が条件のもとで実施できるようになりました。

現場で実施するには4つの段階が必要です

実務者研修で学ぶのは基礎知識と演習までです。実際に喀痰吸引や経管栄養を行うには、次の手順を踏む必要があります。

  1. 実務者研修を修了する
  2. 別途「喀痰吸引等研修」の実地研修を、指導看護師のもとで修了する
  3. 都道府県へ「認定特定行為業務従事者」として登録し、認定証の交付を受ける
  4. 勤務先の事業所が「登録特定行為事業者」として都道府県に登録する

実施できるのは、研修で修了した行為の範囲に限られます。「実務者研修を修了すれば医療的ケアができるようになる」という説明を見かけることがありますが、正確ではありません。

すぐに給与が上がるとは限らない

資格手当を設けている事業所では手当の対象になりますが、有無や金額は事業所ごとに異なります。修了すれば必ず支給されるというものではないので、勤務先の規定を確認してください。

ただし、サービス提供責任者などの役職に就けば、役職手当が加わる場合があります。給与への影響は「資格そのもの」より「資格によって就ける仕事」から生まれると考えるほうが実態に近いでしょう。

修了後の進路|どこで働けるようになる?

実務者研修修了者を求めている職場は幅広くあります。主な就職先を整理します。

職場特徴
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設要介護度の高い方が多く、有資格者を優先して採用する傾向がある
有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅入居者の生活全般を支える。夜勤を含むシフト勤務が中心
訪問介護事業所身体介護を担当できる。サービス提供責任者への道もある
デイサービス(通所介護)日中のみの勤務が中心。生活リズムを保ちやすい
障害福祉サービス事業所重度訪問介護など、医療的ケアの知識が活きる場面がある

実務者研修は全国で通用する研修であり、履歴書の資格欄に記載できます。応募条件に含まれていない求人でも、有資格者であることが採用の判断に影響することはあります。履歴書への書き方は実務者研修は履歴書に書ける?書き方・記載例で解説しています。

進路の選び方|3つの方向から考える

「何ができるか」より「どこへ行きたいか」から逆算すると、次の一歩が決めやすくなります。

方向1|現場で長く働きたい

介助の技術を磨き、現場で信頼される職員を目指す道です。実務者研修で学んだ介護過程の考え方は、日々の介助の質に直結します。

この方向を選ぶなら、次のステップは介護福祉士です。実務経験3年を満たすタイミングを確認し、国家試験の受験を計画に入れておきましょう。

方向2|訪問介護でキャリアを積みたい

一人で利用者の自宅を訪問し、その方の生活に深く関わる働き方です。施設勤務とは違い、生活の場での支援になります。

この方向なら、サービス提供責任者が具体的な目標になります。前述のとおり、実務者研修の修了が要件です。訪問介護計画の作成やヘルパーの管理といったマネジメント業務に関心があるなら、有力な選択肢です。

方向3|専門性を高めたい

医療的ケアの知識を活かし、医療ニーズの高い方の支援に関わる道です。重度訪問介護や、喀痰吸引等研修の受講へと進みます。

実務者研修で医療的ケアの基本研修部分を修了していると、喀痰吸引等研修では実地研修から始められます。専門性を高めたい方にとって、実務者研修は次の研修への足がかりになります。

修了後のキャリアはどう進む?

介護職のキャリアには、比較的はっきりした段階があります。

段階位置づけ
介護職員初任者研修130時間。介護の基礎を学ぶ入門の研修
実務者研修450時間。介護過程と医療的ケアを学ぶ。介護福祉士の受験要件
介護福祉士介護職唯一の国家資格。実務経験3年+実務者研修修了で受験できる
ケアマネジャー(介護支援専門員)介護福祉士として実務経験5年以上などで受験可能。ケアプランを作成する

実務者研修は、この流れの中間に位置します。ここを通らずに介護福祉士へ進むことはできないため、長く介護の仕事を続けるつもりなら、いずれ通る道になります。

実務者研修そのものについては実務者研修とは?修了するメリットや学ぶ内容で詳しく解説しています。受講すべきか迷っている方は実務者研修は必要ない?もあわせてご覧ください。

よくある質問

実務者研修を修了すれば、すぐに医療的ケアができますか?

できません。実務者研修で学ぶのは基礎知識と演習までです。実際に喀痰吸引や経管栄養を行うには、喀痰吸引等研修の実地研修を修了し、都道府県へ認定特定行為業務従事者として登録し、さらに勤務先の事業所が登録特定行為事業者として登録されている必要があります。

修了してすぐにサービス提供責任者になれますか?

資格要件は満たします。ただし実際に就任できるかは事業所の判断であり、一定の実務経験を求められることもあります。求人への応募資格は得られますので、まずは募集条件を確認してみてください。

介護福祉士の受験は、修了後すぐにできますか?

実務経験3年(従事日数540日)以上を満たしていれば受験できます。実務経験がまだ足りない場合は、条件を満たすまで待つことになります。なお受験申し込みの時点で研修が修了していない場合も、修了見込み証明書を提出すれば申し込めます。

まとめ:できることは3つ、進む道はその先で分かれる

実務者研修を修了してできるようになるのは、介護福祉士国家試験の受験、サービス提供責任者への応募、訪問介護の身体介護の3つです。医療的ケアについては基礎を学べますが、現場で実施するには別の研修と登録が必要になります。

その先の進路は、現場で長く働く、訪問介護でキャリアを積む、専門性を高める、という3つの方向に分かれます。どれを選ぶかで次に取るべき資格も変わってきますから、修了を待たずに考えておくと動きやすくなります。

実務者研修は、介護職のキャリアの中間地点にある研修です。ここを通ることで、それまで見えていなかった選択肢が見えるようになります。

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