50代に入ってから介護福祉士実務者研修の取得を考えている人の中には、年齢的な不安をお持ちの人もいるのではないでしょうか。「自分のような年齢の受講者はいるのだろうか」「50代でも修了までやり遂げることができるのか」等の心配事もあるかもしれません。
そこで当記事では「50代」という年齢にスポットをあて、実務者研修を受講するにあたっての事情を解説します。50代という年齢が壁になっている方はぜひご覧ください。
実務者研修保有者の年齢分布
まず、介護福祉士実務者研修の資格を保有している方は、何歳くらいの人が多いのでしょう。
公益財団法人介護労働安定センターから公表されている「令和2年度 介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」では、総22,154人の介護分野の労働者に対して実施した、就業に関するさまざまな調査の結果がまとめられています。
この調査の中では、保有資格別の年齢層も集計されています。以下は「実務者研修」の資格を保有している人の年齢分布です。
年齢 | 割合 |
---|---|
20歳未満 | – |
20歳以上25歳未満 | 2.4% |
25歳以上30歳未満 | 7.4% |
30歳以上35歳未満 | 9.3% |
35歳以上40歳未満 | 11.6% |
40歳以上45歳未満 | 13.0% |
45歳以上50歳未満 | 14.3% |
50歳以上55歳未満 | 13.3% |
55歳以上60歳未満 | 10.0% |
60歳以上65歳未満 | 6.2% |
65歳以上70歳未満 | 3.6% |
70歳以上 | 1.5% |
ご覧のように、介護福祉士実務者研修の資格を保有している人のうち、「50歳以上55歳未満」は13.3%、「55歳以上60歳未満」は10.0%となり、50代の保有者の割合は比較的高めです。40代はさらに高い傾向です。反対に20代や60代になると割合は10%を切ります。
注意点として、このデータは「保有」している人の年齢であり、「受講者」の年齢(受講時の年齢)ではありません。あくまで現時点で保有している人でみると40代50代が多いということがうかがえます。
実務者研修の受講者に50代はいる?
それでは、介護福祉士実務者研修の「受講者」に50代はいるのでしょうか。ここでは受講者の年齢と50代の関係を解説します。
50代の受講者もいる
前提として、受講者の年齢分布を公開しているスクールは少ないため、受講者の年齢の全容は掴みにくい部分があります。
その上で一般的な話となりますが、たいていのスクールでは50代の受講者を一定数抱えていることが多いです。さらには60代70代の受講者がいるスクールもあります。
というのも、介護職は平均年齢自体が高い職種であり、「令和3年度 介護労働実態調査」によれば、介護職全体の平均年齢は「47.7 歳」と集計されています。そのため、実務者研修を受講する人にも年配者が目立ちます。
「50代になってから他業種から介護職へ転職し、実務者研修も受講することになった」「50代で子育てがひと段落したので介護職をはじめ、実務者研修にもチャレンジした」という人も少なくはありません。
詳しくは、各養成スクールの受講者の声などを調べてみるとよいでしょう。50代や60代の修了生の体験談がインターネット上にたくさん公開されています。
受講は何歳まで可能?
介護福祉士実務者研修を受講するのに、年齢的な制限はありません。50代でも問題なく受講でき、受講年齢に上限はありません。
下限についても、明確なルールは設けられていませんが、スクールによっては「心身ともに健康な介護に関心のある16歳以上」といった条件を設けていることもあります。こうした条件はあくまでスクール側が定めるルールであり、法律などで公的に決められているものではありません。
介護福祉士の受験者の年齢は?
「介護福祉士」は介護分野で唯一の国家試験であり、3年以上の実務経験と実務者研修の受講が受験条件となる資格です。将来的に介護福祉士の取得を目指し、実務者研修の受講をお考えの方もいるでしょう。
さて、この介護福祉士の受験者に50代はどの程度いるのでしょう。以下は、直近、第35回(2023年)介護福祉士国家試験における合格者の年齢分布です。
年齢分布 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
~20歳 | 5,001人 | 7.5 % |
21~30歳 | 16,934人 | 25.4% |
31~40歳 | 12,920 人 | 19.4% |
41~50歳 | 16,877 人 | 25.3 % |
51~60歳 | 12,197人 | 18.3% |
61~歳 | 2,782人 | 4.2% |
合計 | 66,711人 | 100% |
ご覧のように「51~60歳」で介護福祉士を受験している方は18.3%を占めます。他の年代と比べても引けを取らない割合であり、50代での介護福祉士受験は、決して珍しいことではないのです。
さらに実務者研修は、「サービス提供責任者(サ責)」になるための資格要件ともなっているため、将来的にサービス提供責任者へキャリアアップする際にも活用できます。
50代で実務者研修を受講する際に気を付けるポイント
50代で介護福祉士実務者研修を受講するのは遅くはありませんが、年齢的にいくつか気を付けたいポイントがあります。
具体的には、以下3つのポイントです。
- 若い受講者もいる
- 長期間の学習が必要になる
- 学習する場所について
以降では、それぞれの詳細を解説します。
若い受講者もいる
実務者研修を50代60代で受講する方もいますが、20代30代40代といった自分より若い世代の受講者もおり、スクーリング授業などでは、他の受講生と一緒にグループワークなどを行うことになります。
つまり、自分より若い世代と同じ環境で学び、同級生として交流する可能性があることは覚えておく必要があります。
もちろん受講生同士は世代はちがえど同じ目的をもつ仲間であり、励みになる存在でもあります。「若い仲間に元気をもらった」「受講生の仲間がいたから最後まで頑張れた」という声も少なくありません。
長期間の学習が必要になる
厚生労働省により、実務者研修の研修期間は「450時間以上・6ヶ月間」と定められています(無資格者の場合)。
たとえば仕事をしながら受講する場合、帰宅後や休日に自宅学習をする生活が最短でも6か月間続くことになり、また、何度か課題提出や小テストなどが行われるスクールもあります。学生時代のように長期間の学習と向かい合うことになりますので、自己管理をしながら計画的に進める必要があります。
また、50代は若い頃に比べて集中力や学習能力が低下しはじめる年齢ともいわれていますので、だからこそしっかりと学習できる時間や環境を確保することが大切になってきます。
学習する場所について
50代の人の中には「子供や高齢の両親と住んでおり家で勉強しにくい」「そもそも家で勉強するのは学生時代ぶりで慣れない」等の理由で、自宅での勉強が上手く進められないこともあるかもしれません。
そうした場合は、図書館、カフェ、コワーキングスペース等、自宅ではない学習場所を探してみるのも手です。養成スクールの「実習室」を利用するのもおすすめです(ただし実習室の有無や規模はスクールによって異なる)。
勉強する環境によって吸収具合も変わってきますので、自分が集中しやすい環境を探してみて下さい。
体調管理に気を付けながら学習を進める
以上のように、介護福祉士実務者研修は50代であっても挑戦できる資格であり、50代で取得することは珍しいことではありません。介護への理解も深まり、キャリアアップにも繋がる資格ですので、意欲がある方はチャレンジしてみてはいかがでしょう。
ただし50代になると、若い頃に比べると集中力や体力などが続かないこともありますので、無理をし過ぎるのは禁物です。ただでさえ介護の仕事は体力を使いますので、働きながら取得を目指す場合には、体調管理を心掛けながら自分にあったペースで進めていきましょう。