【第6回・後編】土屋ケアカレッジカンパニー主催 特別社内研修会

<第6回・後編>『おむつかぶれ(失禁関連皮膚炎)とトラブルシューティング』

2026年1月22日、土屋ケアカレッジカンパニー主催による特別社内研修会・第6回後編「おむつかぶれ(失禁関連皮膚炎)の管理とトラブルシューティング」が開催されました。

前編「褥瘡の管理とトラブルシューティング」に引き続き、平良亮介先生を講師にお迎えし、失禁に伴って起こりやすい皮膚トラブルである失禁関連皮膚炎(IAD)について、褥瘡との違いや見分け方、予防とケアの基本、現場で判断に迷いやすいポイントを中心に、実践的な視点から解説していただきました。

第6回研修会・後編の概要

開催日:2026/1/22(木) 
内容:<第6回・後編>『おむつかぶれ(失禁関連皮膚炎)の管理とトラブルシューティング』
講師:平良亮介氏(水島協同病院 看護部 看護師長/皮膚・排泄ケア特定認定看護師)  
参加対象者:土屋グループの全メンバー(非常勤含む)

第6回研修会・後編『おむつかぶれ(失禁関連皮膚炎)とトラブルシューティング』の概要

<失禁関連皮膚炎(IAD)とは>

定義

尿または便(あるいはその両方)が皮膚に接触することによって生じる皮膚炎性変化。
一般に「おむつかぶれ」と呼ばれます。

原因

尿・便の皮膚への付着
*尿失禁・便失禁がある場合、多くはおむつを着用しており、特に下痢便は皮膚炎を起こしやすくなっています。

要因(なりやすさ)

身体的要因
乳幼児:皮膚の発達が未熟
高齢者:皮膚が老化

ケア要因
・強い擦拭(強くこする)
・石鹸の使いすぎ
・保湿剤・保護剤の未使用
・おむつ内の湿潤管理が不十分(排泄物の量に合ったおむつを着用していない、または排泄物の量に応じたおむつ交換ができてない)

発生の仕組み(発生機序)

  • 失禁により、尿や便が皮膚に長時間接触する。
  • 尿や便に含まれる水分によって皮膚が浸軟(ふやける)。
    *水分の多い下痢便では、より皮膚が荒れます。
  • ふやけた皮膚は生理的なバリア機能が低下し、ずれや摩擦によって、びらんなどの皮膚損傷が生じやすくなる。
    *尿中のアンモニア、便中の消化酵素液が皮膚のダメージを引き起こします。

症状

  • 皮膚の浸軟
  • 紅斑・炎症
  • びらん・水疱
  • かゆみ・痛み
  • 感染(細菌・真菌)

失禁関連皮膚炎(IAD)と褥瘡の見分け方

褥瘡と失禁関連皮膚炎は、どちらもおむつ内で発生しやすく、非常に混同されやすい皮膚トラブルです。

褥瘡失禁関連皮膚炎
発生原因圧迫・ずれ・摩擦尿・便の皮膚への付着
好発部位仙骨部・尾骨部・転子部・踵部など会陰部・肛門周囲・臀部・臀裂、鼠径部など
発生部位の特徴骨突出部位と一致骨突出部位を越えて広がる
形状の特徴紅斑・紫斑・びらん・潰瘍広範囲な炎症・びらん

*褥瘡と失禁関連皮膚炎は同時に発症することもあります。帯状疱疹(ウイルス性の皮膚病)がおむつ内に発生することもあるため、日々の観察が重要です。

Point:
失禁関連皮膚炎を発見したら、まずは原因を考えましょう。

失禁関連皮膚炎の予防と基本ケア

失禁関連皮膚炎は、予防できる皮膚トラブルであり、予防が重要です。

予防対策

  • 皮膚の保護
    ・スキンケア(保湿・洗浄・清拭)を行う。
    ・1日1回の洗浄剤を使用した洗浄や、おむつ交換ごとの清拭を行う。
    *洗いすぎ、こすりすぎは、悪化の一因となるため注意が必要
  • 排泄物の吸収
    ・排泄量、体形に応じたおむつ・パットの選択を行う。
    ・尿量に応じたパッドを使用する。
    ・軟便~水様便に対しては「軟便パッド」の使用を検討する。
    *保湿剤・洗浄クリーム・被覆剤の使用も。

基本ケア:スキンケア3つのホ

保清・保湿・保護が重要です!

①保清(洗浄)
目的:尿・便を速やかに除去し、皮膚への刺激を最小限にする

ポイント:
・失禁後はできるだけ早く洗浄
・洗浄剤を使うのはできれば1日1回
・ぬるま湯、または弱酸性の洗浄剤を使用
・こすらず、押さえるように洗い、洗浄後は優しく水分を拭き取る

②保湿
目的:皮膚の保湿。失禁を繰り返す皮膚は、乾燥、角質層の破壊が起こりやすく、刺激に弱い状態

ポイント:
・洗浄後、皮膚が乾ききる前に保湿
・保湿剤は薄く、均一に
・赤みがなくても、予防的に使用する

*保湿は「治療」ではなく、予防的なケアになりますが、課題として保湿剤の購入のコスト、マンパワーなどが挙げられます。

③保護
目的:尿・便が直接皮膚に触れないようにする。

ポイント:
・皮膚保護剤(バリアクリーム)を使用
・こすらずに、のせるように塗布。厚めに塗ることがポイント。
・失禁が続く場合は、毎回状態を確認

*「洗って終わり」ではなく、皮膚を守る工程が必要です。

注意が必要なこと

悪化要因になるケア

・強くこする
・皮膚が赤いのに何もしない
・アルコールや刺激の強い洗浄剤を使う。

*ハンドソープは非常に刺激が強いので、できればボディーソープ、または石鹸の使用をお勧めします。

ただし、1日1回に!(あまりにも激しい便で汚れた時はやむなし。使用後はしっかり保湿を)一生懸命なケアが、逆に皮膚を壊すこともあります。

特に注意が必要な「便失禁」

下痢便は、失禁関連皮膚炎の最大のリスク要因です。

理由:
・便には皮膚を溶かす酵素(たんぱく分解酵素)が含まれている。
・尿よりも皮膚への刺激が非常に強い。

対応のポイント:
・できるだけ早く洗浄
・赤み・ただれがあれば、速やかに情報共有および報告

*下痢・便失禁は、皮膚トラブルが起こりやすいサインです。
知識を高めよう!

下痢の主な原因

  • 薬剤性(下剤、服薬の影響)
  • 感染症(ノロウイルスなど)
  • 食事・経管栄養(注入速度、摂取している栄養素が体に合ってないなど)
  • 腸管の機能異常、全身疾患など

介護職・アテンダントが気づける「発熱・嘔吐・活気低下」などは重要な情報です。
下痢の原因が下剤の過剰投与によるものではないか、経管栄養の速度・注入量もチェックしましょう。

失禁関連皮膚炎が発症した後のケア・治療

予防方法に準じたスキンケア:3つのホ(保清・保湿・保護)

*ただし、すでにびらんがあるので、クライアントは非常に痛がります。その時は、微温湯よりも少し冷たい方が、痛みは治まります。

ただ、冷たいという不快感にもなるため、慎重な選択が必要です。

当院(水島協同病院)では、少し冷ための水を使って、本人にもそれを説明しながら行います。医師・看護師であれば、水道水より生理食塩水を使用することもあります。

また、粉状皮膚保護剤も有効です。

早期発見、早期対応の重要性

失禁関連皮膚炎と褥瘡は、原因やケアも異なります。
ただ、高齢者では皮膚トラブルが起こりやすいため、「何かおかしい」と感じたら、すぐに報告しましょう。

早期発見・予防は、介護職の皆さまが大きく貢献できる領域です。
日常生活を支える立場だからこそ、気づきと行動が最大の予防になります。

まとめ

  • 失禁関連皮膚炎は予防できる皮膚トラブル
  • 失禁関連皮膚炎の予防は、褥瘡予防にもつながる
  • 基本はスキンケアの「3つのホ(保清・保湿・保護)」
  • 特に便失禁時は要注意
  • 早期発見・早期対応が何より重要
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