実務者研修の医療的ケアとは?試験内容と合格率を上げるための秘訣

平成29年から、介護福祉士国家試験の実務経験ルートでの受験資格として、3年以上の実務経験に加え、実務者研修を修了していることが必須条件となりました。

そして、この「実務者研修」のカリキュラムの中には、「医療的ケア」という科目が必須科目として位置付けられています。

今回は、「実務者研修の医療的ケアはどういったものなのか」を中心に、医療的ケアの概要と演習内容、そして「修了したあと、実際に現場で医療的ケアを行うまでに何が必要なのか」までをわかりやすく解説します。

この記事のポイント
  • 実務者研修の医療的ケアで学ぶのは「喀痰吸引」と「経管栄養」の2分野です
  • 修了しただけでは現場で医療的ケアはできず、実地研修・認定・事業所登録の3ステップが必要です
  • 演習は喀痰吸引・経管栄養を各5回以上、加えて救急蘇生法を1回以上。落ち着いて手順を身につければ大丈夫です

医療的ケアとは

医療的ケアは、実務者研修の一部として組み込まれているカリキュラムで、「痰の吸引(喀痰吸引)」と「経管栄養」の2分野を指しています。

施設では、日々のケアをする中で、医療行為と非医療行為の線引きが曖昧で、判断に困ることがしばしばありました。たとえば、爪切りやバイタル測定、湿布の貼付など、生活の中で日常的に行っているものが医療行為にあたるのか疑問視されていました。そこで厚生労働省は、平成17年(2005年)7月に、原則として医療行為にあたらないと考えられる項目を具体的に示しています。

また、平成24年(2012年)4月の「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正により、介護職員も一定の条件下において、医療的ケアを行えるようになりました。この法改正で行えるようになった医療的ケアは、「喀痰吸引」と「経管栄養」の2分野です。これらはもともと、医療従事者が行っていた行為でした。しかし、医療現場の人手不足と介護需要の高まりを背景に、一定の研修を受けた介護職員も担えるようになりました。

ただし、介護職員が行える医療的ケアは「喀痰吸引」と「経管栄養」に限られます。喀痰吸引は口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部、経管栄養は胃ろう・腸ろう・経鼻経管が対象です。この範囲以外の医療行為は、介護職員が行うことはできません。

現在の介護現場では、看護職の人手不足も課題となっています。また、2025年には「団塊の世代」が後期高齢者となり、介護職員1人あたりの負担も大きくなることが予想されます。そのため、今後、介護職員が医療的ケアを求められる場面は少なくありません。これは、医療的ケアを的確に行える介護職員のニーズが高まっているということでもあります。

医療的ケアは大きなリスクが伴うため、手順を正しく理解し、利用者に寄り添いながら丁寧に実施する必要があります。

【重要】実務者研修を修了しただけでは、現場で医療的ケアはできません

実務者研修で医療的ケアを学び修了しても、それだけで現場ですぐに喀痰吸引や経管栄養を行えるわけではありません。実務者研修の医療的ケアは、喀痰吸引等研修でいう「基本研修」にあたる講義と演習の部分です。実際に業務として実施するには、修了後にいくつかのステップが必要になります。

医療的ケアを現場で行えるようになるまでの流れ

現場で医療的ケアを実施するまでの4ステップ
  1. 実務者研修の医療的ケア(基本研修にあたる部分)を修了する
    喀痰吸引等研修の基本研修に相当する部分の履修が免除されます。
  2. 実地研修を受ける
    登録研修機関のもと、指導看護師などの指導を受けながら、実際の利用者に対して喀痰吸引・経管栄養を所定の回数以上行います。
  3. 都道府県に「認定特定行為業務従事者」として登録し、認定証の交付を受ける
    実地研修の修了後、住民票のある都道府県に申請します。
  4. 勤務先が「登録特定行為事業者」であること
    認定を受けても、実施できるのは登録特定行為事業者として登録された事業所内に限られます。勤務先が未登録の場合は、事業所の登録が必要です。

つまり、「実務者研修の修了」は医療的ケアを行うための出発点です。現場で実施するには、そのあとの実地研修と認定登録、勤務先の事業所登録までがそろって初めて可能になります。求人や研修の案内で「実務者研修を修了すれば医療的ケアができる」と受け取れる表現を見かけたら、この流れを思い出してください。

実務者研修で学ぶ医療的ケアの演習内容

実務者研修の医療的ケアでは、講義で基礎を学んだあと、シミュレーター(練習用の人形)を使った演習を行います。実際の利用者を想定して繰り返し練習することで、正しい手順を身につけていきます。スクーリング(教室での学習)の日数はコースや保有資格によって異なるため、詳しくは各スクールの案内でご確認ください。

演習で行う内容と評価について

医療的ケアの演習では、喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管)について、それぞれ各5回以上の演習が求められます。あわせて、救急蘇生法の演習も1回以上行います。演習の最後には実技の評価が行われ、理解度を確認するための筆記の確認テストが実施される場合もあります。

実際の人間を想定して行うため、修了評価の基準は高めに設定されています。とはいえ、規定の回数を正しい手順で繰り返すことで身についていく内容です。万が一、評価で再確認が必要になっても、合格できるまで補講を用意しているスクールもありますので、過度に不安になる必要はありません。

喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)

喀痰吸引は口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の3種類で、いずれも5回以上、正しい手順で行います。

喀痰吸引は、決められた範囲を超えて吸引チューブを挿入すると、迷走神経の刺激による呼吸停止や心停止などを引き起こす危険性があります。特に鼻腔粘膜はデリケートで出血しやすい箇所です。吸引チューブが思うように入っていかない場合は、無理に入れず、角度を確認しながら挿入する必要があります。

挿入する長さや吸引の時間には目安があり、決められた範囲を守ることが大切です。また、気管カニューレ内部の吸引では滅菌操作が求められ、口腔・鼻腔内の吸引よりも難易度が高くなります。ただし、一つひとつの作業自体は難しいものではないので、落ち着いて行うことで、作業の抜けや手順の間違いを防ぐことができます。

喀痰吸引は、鼻や口からチューブを入れて行うため、利用者にとっては負担の大きいケアです。吸引を行う際は声がけをしっかり行い、利用者に寄り添ったケアを心がけましょう。

経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管)

経管栄養は、胃ろう・腸ろう・経鼻経管の3種類で、こちらも5回以上、正しい手順で行います。

経管栄養とは、嚥下機能の低下により経口摂取が難しくなった方に対し、胃または腸などから栄養剤を注入する食事方法です。決められた内容や流す速度、利用者の体勢などを守らずに実施すると、嘔吐や下痢、逆流などの危険性があります。実施中は都度、利用者の状態や流れの確認を行いましょう。

また、経管栄養は喀痰吸引に比べて手順や確認事項が多いため、作業の抜けや確認不足には十分に注意が必要です。演習では、作業後の確認や片付けの忘れで再確認になる方が多いので、退室まで気を抜かずに取り組みましょう。

これら2分野は、落ち着いて行えば難しい行為ではありません。ただし、どちらも大きなリスクを伴うため、安易に考えず、正しい手順をしっかりと身につけましょう。「どうしたらアクシデントが起きるのか」「それを防ぐにはどうすればよいか」「どのタイミングが最も危険か」といったリスクの側から考え、一つずつ潰していくことで、医療的ケアへの理解が深まり、手順も身につきやすくなります。

なお、理解度を確認するために筆記の確認テストが行われることがあります。内容は、医療的ケアを行う際の注意事項、作業範囲、作業に伴うリスクなどが中心です。作業内容を正しく理解し、演習を繰り返すことで身につくものなので、無理に暗記する必要はありませんが、「筆記の確認がある」ことは頭の片隅に入れて演習に臨むとよいでしょう。

忘れてはいけないのは、どちらの行為も利用者にとっては苦痛が伴うケアだということです。介護職員側の都合で流れ作業になったり、自分の中で手順を変えて行うことは、絶対にしてはいけません。必ず声がけを行い、利用者の表情を見ながら、寄り添ったケアを心がけましょう。

実務者研修の医療的ケアが免除される条件は?

喀痰吸引等研修(第一号・第二号研修)を修了された方、看護師・准看護師の方は、実務者研修の医療的ケアが履修免除となります。実務者研修を申し込む際は、医療的ケアの免除申請を忘れずに行いましょう。

一方で、介護職員初任者研修や旧ホームヘルパー1級、介護職員基礎研修を修了していても、医療的ケアは免除されません。

医療的ケアの演習を安心して修了するためのポイント

医療的ケアの演習は、各項目を規定の回数、正しい手順で行えるようになることが求められます。一つでも手順に間違いがあると、その場では合格とならないこともあり、医療的ケアは比較的難易度が高い科目といわれています。「一度で通るか不安」と感じる方も少なくありません。

スクールで受講する場合は、繰り返し演習を行うことで理解を深め、正しい手順を身につけられます。また、万が一、修了評価で再確認が必要になっても、無料で補講を行っていたり、合格できるまで継続して受講できたりするスクールもあります。演習に不安のある方は、こうしたサポート体制や、医療的ケアの指導に慣れた講師がいるスクールを選ぶと、落ち着いて取り組みやすくなります。土屋ケアカレッジの実務者研修コースの詳細も、あわせてご確認ください。

実務者研修の医療的ケアは利用者の気持ちに寄り添うことが大切

実務者研修の医療的ケアは専門性が高く、難しい項目です。ケアを受ける方には苦痛が伴うものですし、実施する側にとっても大きな責任が伴います。

介護支援は「仕方なく」や「なんとなく」という気持ちで行ってよいものではありません。今後ますます介護職員の医療的ケアが求められていきますが、忘れてはいけないのは「利用者の気持ちにどれだけ寄り添えるか」という点です。

これから実務者研修で医療的ケアを学びたいと考えている方は、ぜひこの機会に「介護支援とはどのようなものか」をあらためて見つめ直し、医療的ケアの演習に取り組んでみてください。

実務者研修の医療的ケアに関するよくある質問

実務者研修を修了すれば、すぐに喀痰吸引や経管栄養ができますか?

いいえ、修了しただけでは現場で実施できません。修了後に、指導看護師などのもとで実地研修を受け、都道府県に「認定特定行為業務従事者」として登録し、さらに勤務先が「登録特定行為事業者」であることが必要です。実務者研修の修了は、その第一歩にあたります。

医療的ケアの演習では何回くらい実施しますか?

喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管)を、それぞれ各5回以上行います。あわせて救急蘇生法の演習も1回以上実施します。手順が決まっているため、繰り返し練習することで身につけられます。

すでに喀痰吸引等研修を修了しています。医療的ケアは免除されますか?

喀痰吸引等研修(第一号・第二号研修)を修了された方や、看護師・准看護師の方は、実務者研修の医療的ケアが履修免除となります。お申し込みの際に免除申請を行ってください。なお、初任者研修や旧ホームヘルパー1級では免除されません。

「医療的ケアまで、きちんと学べるスクールで学びたい」という方へ

土屋ケアカレッジの実務者研修

喀痰吸引・経管栄養の演習を、現場経験のある講師のもとで学べます。働きながら通いやすい振替制度や、教育訓練給付金の対象コースもご用意しています。

こんな方におすすめ

  • 医療的ケアの演習に不安があり、サポート体制で選びたい方
  • 働きながら無理のないペースで修了を目指したい方
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