兼ねてから高い需要が続いている介護の仕事ですが、「さらにキャリアを積んで確固たる技術を身につけていきたい」という方も多いのではないでしょうか。
中でも介護福祉士実務者研修の取得(受講)は、介護の現場で働いているとよく耳にする資格です。
この研修を受けていることで出来るようになるケアも一部あり、現場では大変重宝されています。
今回は、「介護福祉士実務研修の取得にどれくらいの時間が必要なのか」について解説していきます。
介護福祉士実務者研修とは
介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修の上位に位置づけられる資格(研修)で、良質な介護サービスを提供するための実践的な知識と技術の習得を目的として生まれた研修(資格)です。
かつてホームヘルパー1級(ヘルパー1級)と呼ばれていましたので、こちらの方が馴染みがあるという方も多いかもしれません。
現在では、国家資格である「介護福祉士」の受験するためには、実務経験3年以上に加え、
「実務者研修」の修了が必須となりました。
つまり、介護福祉士実務者研修を取得することによって、介護福祉士を受験する資格を一つを得られるということです。
この研修課程を修了することで、介護に関する専門的な知識と実践的な技術を習得でき、より質の高い介護サービスを提供できるようになります。
また、近い資格では「初任者研修」というものがありますが、初任者研修では介護福祉士の受験資格にはなりませんので注意が必要です。
介護福祉士実務者研修は「介護職員基礎研修」や「ホームヘルパー1級(2013年に廃止となり現在は受験できなくなった資格)」と同等以上の資格・研修とされています。そのため、受講しておくことで 、介護職としてのスキルアップや給与・待遇面に有利に働きます。
実務者研修を取得するにはどのくらいの勉強時間が必要?
実務者研修を取得するためには、受講時間にして450時間の勉強が必要です。
実務者研修の科目は20科目あり、そのカリキュラム内容は「介護」「人間と社会」「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」の四つに大きく分けられます。中でも「医療的ケア」では 喀痰吸引や経管栄養などを実技として学んでいく必要があります。
自宅学習を行いつつ、必要に応じてスクールへの通学を行うというのが一般的な方法ですが、近年ではオンライン学習なども充実していますので、働きながら効率よくスキルアップをすることが可能です。
とはいえ専門的な技術も身につけることが必要となるため、通学による学習時間も必須となります。通学による学習時間は最低でも「介護過程3」(45時間)+「医療的ケア(演習)」の時間が必要です。なお、医療的ケア(演習)については、受講時間数の規定がなく、受講するスクールによって異なってきます。
働きながらでも実務者研修の取得は可能?
実務者研修を働きながら受講することはもちろん可能です。
しかし、実務者研修のカリキュラムは、450時間と定められているため、仕事終わりの時間や自分の休日を活用していく必要があります。
受講するスクールによって講座の時間は異なります。日中働いている方は、土日や夜間の講座が開設されているスクールを選ぶなど、ご自身のライフスタイルや働き方に合わせてスクールを選択しましょう 。
実務者研修を最短で取得するために必要な時間は ?
実務者研修は、すでに取得している資格の種類によって、一部のカリキュラムが免除されることがあります。
そのため、無資格者と有資格者では実務者研修にかかる時間が異なります。
無資格者から取得を目指す場合と、有資格者で取得を目指す場合の受講時間について、それぞれ詳しく説明します。
無資格から取得する場合
無資格から実務者研修を修了するには、時間にして450時間、6ヶ月程のカリキュラムを受講する必要があります。
そのため、自宅で行う通信講座と通学講座での学習を進めるのが効率的です。
スクールによって受講時間数に多少の違いはありますが、通学での講座は45時間+医療的ケアの演習の時間、自宅学習は405時間程必要です。
6ヶ月で取得する場合には、1日あたり2.5時間ほど学習すれば良いという計算になります。
また、働きながら実務者研修の取得を目指す方は、一週間5日勤務102日休みを想定した場合、平日は1日1時間、休日は1日5.4時間ほど学習すれば6ヶ月程で修了できる計算になります。
「長期間の勉強ではモチベーションの持続が難しい」という方は、6ヶ月での修了に合わせて、まとめて学習する短期集中型の学習方法も選択肢のひとつです。
有資格から取得する場合
実務者研修の標準的な研修時間は450時間、6ヶ月と定められていますが、介護職員初任者研修や、過去に実施されていた訪問介護員養成研修(ホームヘルパー)1〜3級、介護職員基礎研修を修了しているなど、保有している資格によっては免除されるカリキュラムもあります。そのため、持っている資格によって必要な学習期間が異なります。
例として、介護職員初任者研修を取得している方は最短で約4ヶ月(自宅学習+通学8〜10日間)で実務者研修を取得が可能です。
有資格者で実務者研修の取得を目指す方は、どのカリキュラムが免除されるのか事前に確認しておきましょう。
介護福祉士実務者研修を取得する5つのメリット
実務者研修を取得するには、一般的に450時間もの受講時間が必要となるため、資格取得に尻込みしてしまう方もいるかもしれません。
しかし、介護福祉士実務者研修を取得することで得られるメリットは様々あります。
ここでは、実務者研修を取得するメリットを5つご紹介します。
介護福祉士国家試験の受験資格の一つを得られる
介護福祉士の国家資格取得方法は、「実務経験3年以上」「福祉系高等学校を卒業する」「養成施設課程を修了する」と大きく分けて三つあります。そのうち実務経験3年以上を目指す方法では、実務経験3年以上に加え、「実務者研修」の修了が必須となりました。
したがって、実務者研修を取得することで、介護福祉士の受験資格の一つを得られるというメリットがあります。
就職の際に有利
実務者研修は、「介護職員基礎研修」「ホームヘルパー1級」「初任者研修(ホームヘルパー2級)」といった各資格と同等以上の研修です。そのため、実務者研修を修了していれば、たとえ業界未経験の方でも就職の際に有利に働くでしょう。
給与がアップする
介護福祉士は名称独占の国家資格です。介護福祉士国家試験の合格者でないと介護福祉士と名乗ることはできません。
この資格は、介護職員の中でも、より専門性があるため、他の資格と比較して給与や待遇面で優遇される傾向にあります。
厚生労働省が発表した介護従事者処遇状況などの調査によると、無資格者の平均給与額が27万1260円に対し、介護福祉士は32万8720円と、約57000円もの差があります。 このように、実務者研修を修了し、さらに介護福祉士の資格を取得することで給与面でも大きなメリットがあると言えます。
サービス提供責任者になれる
訪問介護事業所では、「サービス提供責任者」を必ず配置しなければなりません。
実務者研修の修了者は、この「サービス提供責任者」になることができるため、介護業界から強く必要とされています。
サービス提供責任者は、利用者のアセスメントやモニタリングなどの業務を行うほか、ヘルパーのシフト管理やケアマネージャーとの連絡も測ります。仕事内容は多岐にわたり、責任も伴います。しかし、訪問介護事業所のリーダーとして頼りにされる存在となりますので、やりがいも大きいでしょう。また、サービス提供責任者は、訪問ヘルパーよりも給料が優遇されることがほとんどです。
専門的な知識と技術を取得できる
実務者研修は、初任者研修よりも320時間分多くのカリキュラムを学ぶこととなります。
特徴的な講座には「介護過程III」と「医療的ケア」があり、「介護過程III」では介護の基本となる介護過程の「アセスメント」「計画立案」「実施」「評価」を実践的に活かすことができます。 個別支援計画書をもとに、食事や移動入浴排泄などの一人一人の状況に合わせた支援を適切に行えるように学び、さらにスタッフ同士が連携して行う業務も学べるため、将来的にサービス提供責任者として働く際にも活かすことができます。
また、「医療的ケア」の講座では、医師や看護師以外は認められていない「喀痰吸引」「経管栄養」の基本研修を学ぶことができます。
実際に介護職員が現場でこれらの処置を行う場合には、登録研修機関で実地研修を受ける必要があります。
このように、実務者研修を修了することで、一人前の介護職員として現場でできる業務が増えます。実務者研修を取得するには長時間の勉強が必要となりますが、その分より多くの場所で重宝される人材へとキャリアアップができるため、取得する価値は十分にあると言えます。
実務者研修取得に向けて自分に合ったスケジュールで継続して勉強しよう
実務者研修を取得するためには、一般的に450時間もの受講時間が必要となります。
研修時間が長く、仕事や家事などの忙しさから学習できない日もあるかもしれません。
1日の目安となる学習時間を頭の片隅に置いて、出来なかった時は別の日に多めに学習したり、仕事と両立できるよう計画を立てるなど、工夫して勉強を進めましょう。
また、実務者研修の取得に向けて、スクール選びは非常に重要なポイントです。通いやすいスクールを選ぶ、自分のライフスタイルに合った時間に受講できるスクールを選ぶなど、無理なく進めていけるようしっかりと比較検討してスクールを選びましょう。
人それぞれ生活スタイルは違うので、一概にどの方法が正解と言うことはできません。時間の確保・自分に合った環境を整えていくことが最重要です。
自分の学習スタイルをつかんで、介護の世界で有利に働く知識を習得していきましょう。