実務者研修とホームヘルパー1級の違いは?

ヘルパーの正式名称はホームヘルパーと言い、2013年までホームヘルパー1級・2級・3級が取得できる制度がありました。

しかし、現在はホームヘルパーの取得制度は廃止され、それに代わる研修制度として「実務者研修」という資格があります。

実務者研修は、ホームヘルパー1級に相当すると言われ、「実務者研修=ホームヘルパー1級」と認識される方もいらっしゃいますが、実際に内容を見てみると違いがいくつかあります。

今回は「実務者研修とヘルパー1級の違い」について詳しく解説します。

実務者研修とヘルパー1級の違い

実務者研修とホームヘルパー1級の資格の違いは「学習内容」と「受験資格」があり、具体的には以下3つの項目が違います。

  1. 介護過程Ⅲの追加
  2. 医療的ケアの追加
  3. 介護福祉士国家試験の受験資格

3つの項目を順に説明します。

介護過程Ⅲの追加

実務者研修では「介護過程Ⅲ」の科目が追加されました。

介護過程Ⅲの学習内容は、介護過程の展開をグループワークで行います。

具体的には、介護が必要な方の事例を用いて①アセスメント、②介護計画立案、③介護計画実践、④評価を行います。

介護の現場では①から④を繰り返すことで、介護を必要とされる方のニーズに合った介護サービスを提供しています。

なお、介護過程Ⅲはスクールへの通学が必須となる科目です。

医療的ケアの追加

実務者研修では介護過程Ⅲに加え「医療的ケア」の科目も追加されました。

医療的ケアでは①吸引、②経管栄養の学習・演習を行います。

吸引とは、ご自身で痰を出せない方に対し、機械の繋がった管を鼻・口・気管から挿入し痰を吸引することをいいます。

痰の貯留は誤嚥性肺炎や息苦しさの原因となり、大変危険です。

また、経管栄養は、口から食事がとれない方に対して、胃や腸に繋がった管から栄養を投与することをいいます。

医療的ケアは、以前は医師や看護師しかできませんでしたが、吸引や経管栄養を必要とされる方が多くいるため介護職も必要とされる技術となりました。

医療的ケアの演習はスクールへの通学が必須となります。

介護福祉士国家試験の受験資格

介護福祉士国家試験の受験の要件に「実務者研修」の資格取得が必須となっています。

実務者研修制度ができる前は、様々なルートで介護福祉士国家試験を受験することができました。

しかし、その結果として、介護の現場における知識や技術に大きな個人差があることが問題となっていました。

今では実務者研修を介護福祉士国家試験の受験の必須要件とすることで、介護福祉士のすべての方が高度な知識・技術を取得できるようになっています。

実務者研修の資格を取得するメリット

実務者研修とヘルパー1級の違いを学習と受験資格の面からお伝えしましたが、実務者研修を取得することで得られるメリットはヘルパー1級よりも多数あります。

主なメリットは以下の3つになります。

  1. 給料アップが見込める
  2. サービス責任者になれる
  3. 働く場所の選択肢が増える

3つを順に解説します。

給料アップが見込める

実務者研修の資格を取得すると給料アップが見込めます。

以下は令和3年の介護職員の平均給与額の表です。

引用)厚生労働省 令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果

上の表から、実務者研修を修了された方は、保有資格がない方・介護職員初任者研修を修了した方と比較すると給料が高い傾向にあることが分かります。

なぜ給料がアップするのかというと、高度な介護サービスを提供できるため「介護を必要とされる方に幅広く対応ができるから」です。高度な介護サービスは介護報酬の点数に直結します。

サービス責任者になることができる

実務者研修を修了するとサービス責任者になることができ、キャリアアップに繋がるというメリットもあります。

サービス責任者は、略して「サ責」とも呼ばれることがあります。

訪問介護事業所の介護業務におけるリーダーのような存在となり、ケアマネージャーや訪問事業所との連携や調整をするコーディネートの役割を担っています。

訪問介護事業所では、「利用者40人に対してサービス責任者1人を配置する」と定められておりニーズが高まっています。

働く場所の選択肢が増える

実務者研修の資格取得により、働く場所の選択肢が増えます。高度な介護サービスを提供できる人材は、病院、施設、在宅と様々な環境で活躍できるためです。

場合によっては、実務者研修が介護職の採用要件に記載されている場合もありますし、履歴書に実務者研修の資格について記載されていると採用の対象になることもあります。

働く場所の選択肢が増えることで、より自分に合った職場で自分らしく働くことができます。

ヘルパー1級保有者は実務者研修の免除科目がある

ヘルパー1級の資格を取得されている方は、実務者研修の免除科目が多くあります。

ヘルパー1級保有者が実務者研修で学ぶ科目は「介護過程Ⅲ」と「医療的ケア」のみで、時間にすると介護過程Ⅲ45時間、医療的ケア50時間の、合計95時間です。

医療的ケアの科目では、学習に加えて演習が必要となりますが、演習の時間数に規定はなくスクールによって異なります。

目安としてはおおよそ12〜16時間となります。

介護の資格を持っていない方が実務者研修を受講すると20科目、450時間の学習が必要です。

実務者研修の科目とそれぞれの受講時間は以下の通りです。

1. 人間の尊厳と自立5時間
2. 社会の理解Ⅰ 5時間
3. 社会の理解Ⅱ30時間
4.    介護の基本Ⅰ10時間
5.    介護の基本Ⅱ20時間
6.    コミュニケーション技術20時間
7.    生活支援技術Ⅰ 20時間
8.    生活支援技術Ⅱ 30時間
9.    発達と老化の理解Ⅰ10時間
10.  発達と老化の理解Ⅱ20時間
11.  認知症の理解Ⅰ10時間
12.  認知症の理解Ⅱ20時間
13.  障害の理解Ⅰ10時間
14.  障害の理解Ⅱ20時間
15.  こころとからだのしくみⅠ20時間
16.  こころとからだのしくみⅡ60時間
17.  介護過程Ⅰ20時間
18.  介護過程Ⅱ25時間
19.  介護過程Ⅲ45時間
20.  医療的ケア50時間 
実務者研修カリキュラム

ヘルパー1級の資格を取得されている方は、かなりの科目が免除されることが分かります。

実務者研修とヘルパー1級は違いがある

今回は「実務者研修とヘルパー1級の違い」と、「実務者研修を取得するメリット」について解説しました。

実務者研修とヘルパー1級には明確な違いがあり、その違いは学習内容と介護福祉士国家試験の受験の要件にあります。

また、実務者研修はヘルパー1級に比べて、給料アップが見込めたり、キャリアアップに繋がったりと、取得することで得られるメリットは多くあります。

介護のニーズが高まっている近年だからこそ、介護職の役割も増え、活躍できる場が広がっているのです。

実務者研修を受講することで高度な介護サービスについて学習でき、介護福祉士の介護の知識・技術の均一化も見込まれます。介護の仕事に携わる方で、スキルアップやキャリアアップを目指しているという方は取得を目指してみてはいかがでしょうか。

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