介護の仕事に携わっていると「実務者研修」という資格について耳にすることがあります。
介護の資格にはさまざまな種類があり、どの資格を取得すべきか迷われる方もいらっしゃるでしょう。
今回は「実務者研修とはどんな資格なのか」を中心に、「実務者研修制度ができた理由」や「実務者研修を取得するための方法」について解説します。
実務者研修はどんな資格
実務者研修とはどんな資格かというと「質の高い介護サービスが提供できるようになる資格」です。
介護についての基礎的な学習はもちろん、認知症や障がい、医療的ケアについても学ぶことができます。
医療的ケアは、吸引と経管栄養の実践を学びます。
吸引は自己にて痰を排出できない方に対し、吸引する機械と管をつかって鼻・口・気管から痰を取り除くことをいいます。
また、経管栄養は口から食事が食べられない方に対し、胃や腸にある管から栄養を投与することをいいます。
実務者研修は介護福祉士国家試験の受験に必須の資格でもあります。
介護福祉士を目指している方は実務者研修を修了しなければなりません。
実務者研修ではカリキュラムと時間数が定められており、「20の科目」を「450時間」学びます。
以下に20の科目と時間をまとめました。
1. 人間の尊厳と自立 | 5時間 |
2. 社会の理解Ⅰ | 5時間 |
3. 社会の理解Ⅱ | 30時間 |
4. 介護の基本Ⅰ | 10時間 |
5. 介護の基本Ⅱ | 20時間 |
6. コミュニケーション技術 | 20時間 |
7. 生活支援技術Ⅰ | 20時間 |
8. 生活支援技術Ⅱ | 30時間 |
9. 発達と老化の理解Ⅰ | 10時間 |
10. 発達と老化の理解Ⅱ | 20時間 |
11. 認知症の理解Ⅰ | 10時間 |
12. 認知症の理解Ⅱ | 20時間 |
13. 障害の理解Ⅰ | 10時間 |
14. 障害の理解Ⅱ | 20時間 |
15. こころとからだのしくみⅠ | 20時間 |
16. こころとからだのしくみⅡ | 60時間 |
17. 介護過程Ⅰ | 20時間 |
18. 介護過程Ⅱ | 25時間 |
19. 介護過程Ⅲ | 45時間 |
20. 医療的ケア | 50時間 |
医療的ケアは上記の50時間に加えて、12〜16時間の研修が必須となります。
実務者研修の制度はなぜできたのか
実務者研修は平成25年度から行われており、比較的新しい介護の研修になります。
「なぜ実務者研修の制度ができたのか」、その理由としては以下の3つがあげられます。
①超高齢社会により介護職員の需要が高まっている
②高度な介護サービスが必要とされている
③介護の研修制度の一本化
3つの理由を順に解説します。
1.超高齢社会により介護職員の需要が高まっている
日本は超高齢社会であり、介護を必要とされる方が年々増加しています。それに伴い、介護職員の需要も高まっているということです。
また、介護を必要とされている方の増加に加え、少子高齢化による病院の働き手不足と医療費の増大もあり「病院から在宅へ」という方針を厚生労働省が示しています。
この方針により、在宅で療養しながら生活をされている方が増え、介護職員の需要がさらに増えたということです。
介護職員は施設や自宅などで介護を必要とされる方の生活のサポート、身の周りの世話などを行い、幅広く活躍しています。
2.高度な介護サービスが必要とされている
医療の発達によって、人は疾患を抱えながらも長く生きることができるようになり、介護度の高い方も増加しています。
そのため、介護度の高い方にも対応できる、高度な介護スキルを持った介護職員が求められています。
実務者研修では、このような高度な介護スキルを取得するためのカリキュラムが組まれています。
3.介護の研修制度の一本化
以前まで介護職のキャリアアップには「ホームヘルパー資格制度」と「介護職員研修制度」の2つがありました。
しかし、これらは学習内容が重複していたため分かりづらさがありました。
「実務者研修」は、これらの複雑な研修制度を一本化したものになります。
また、「ホームヘルパー資格制度」と「介護職員研修制度」があった当時は、介護福祉士国家試験の受験ルートが様々あり、介護の知識や技術に大きな個人差がありました。
受験資格に「実務者研修修了者」と定めることで、安定した介護の知識と技術の確保を見込んでいます。
実務者研修の資格取得方法
実務者研修の資格を取得するには、実務者研修が修了できるスクールで学ぶ必要があります。
スクールには、①通学受講するスクールと、②通信受講するスクールの2つがあります。
通学受講は、学校のように決められた日時に決められた科目を学びます。
一方、通信受講は、WEBで学習ができるため、自分が受講したいタイミングで勉強ができます。
通信受講は時間の都合がつきやすく、働きながら受講されている方も多くいらっしゃいます。
すべての科目が通信で受講できるわけではなく、一部通学が必須の科目があります。
「介護過程Ⅲ」と「医療的ケアの演習」は通信では受講できません。
介護過程Ⅲでは介護技術や介護の分析力・応用力を学びます。
医療的ケアの演習では吸引や経管栄養の手技を取得します。
実務者研修の最後には試験があり、試験に合格すると実務者研修の資格が取得できます。
実務者研修の資格は履歴書に記載できる
実務者研修の資格を取得すると、履歴書の資格欄に記載ができ、自己アピールにも繋がります。
実務者研修の資格取得者の需要は高くなっており、雇用する会社側も採用したい人材となっています。
実務者研修を取得することで働く場所の選択肢が広がり、給料アップも見込めます。
履歴書に記載する際、実務者研修は略称になるため正式名称を記載するように注意しましょう。
正式名称は「介護福祉士実務者研修」となります。
実務者研修は質の高い介護サービスが提供できる資格
今回は「実務者研修はどんな資格なのか」を中心に、「実務者研修制度ができた背景」や「資格を取得するための方法」について解説しました。
実務者研修の資格を取得することにより自身の介護のスキルアップはもちろん、介護を必要とされる方に質の良い介護を提供することができます。
働く場所の選択肢が広がったり、給料アップに繋がるなど、実務者研修資格を取得するメリットは多数あります。
また、実務者研修を修了し現場での実務経験が3年以上ある方は、介護福祉士国家試験の受験ができます。
実務者研修は、ほとんどの科目を通信で受講でき、働きながらでも取得可能な資格です。
介護のスキルアップ・キャリアアップを目指している方に、おすすめしたい資格となっています。