実務者研修は、民間のスクールだけでなく、ハローワークでも受講できることはご存知でしょうか。ハローワークの場合は受講費用が全額免除されるため、費用面でのメリットも大きいです。
ただし、ハローワークではさまざまな制限が設けられており、注意しなければならない点もあります。
そこで当記事では、ハローワークで受講できる実務者研修について、メリット・デメリットも交えつつ解説します。実務者研修に掛かる費用を抑えたい方はぜひご覧ください。
ハローワークトレーニングとは
「ハローワーク(公共職業安定所)」は、仕事を探している求職者や離職者に対し、さまざまなサービスを無償で提供する、国(厚生労働省)が運営する総合的雇用サービス機関です。
また、ハローワークでは「ハローワークトレーニング(職業訓練)」と呼ばれる訓練サービスも用意しています。
このハローワークトレーニングは、再就職に向けての技術やスキルを学ぶための訓練であり、以下の様なさまざまな分野の技術や知識を学ぶことができます。
- 介護、福祉
- OA事務
- 電気設備
- CAD
- IT(WEBデザインやプログラミング) など
また単に技術を学ぶだけでなく、訓練を通じ「簿記検定」「電気工事士」「基本情報技術者」など、専門的な資格を取得できるコースもあります。
介護分野においては「介護職員初任者研修」「介護事務管理士」といった資格をはじめ、今回取り上げる「実務者研修」を取得できるコースも用意されています。
実務者研修に関しては「介護職員実務者研修科」「介護職員実務者養成科」のような名称で、各地のハローワークがコースを設置していますので、「ハロートレーニングコース情報検索」にて検索をしてみて下さい。
ハローワークは免除されて安い
ハローワークトレーニングでの受講費用は全額免除されるため、無料となります(ただしテキスト代などの1万~2万円は実費となります)。
また、条件を満たす場合は「職業訓練受講手当」として月10万円が支給されます。
一方、民間のスクール(養成施設)で受講する場合、無資格者であれば一般的に10万~20万円程度の費用が発生します。
受講する場所 | 実務者研修の受講費用 |
---|---|
ハローワークトレーニング | 無料(ただしテキスト代等は実費 ※1~2万円程度)+職業訓練受講手当を支給 |
民間スクール | 10万~20万円程度を支払う |
ハローワークで実務者研修を受講するための条件
ハローワークトレーニングには「公共職業訓練(離職者訓練)」と「求職者支援訓練」の大きく2タイプがあります。
訓練タイプ | 対象となる人 | 実務者研修の受講費用 |
---|---|---|
公共職業訓練 (離職者訓練) | 雇用保険に加入しており、雇用保険の失業給付を受給されている人 | 無料 (ただしテキスト代等は実費 ※1~2万円程度) |
求職者支援訓練 | 雇用保険被保険者でない求職者 | 無料 (ただしテキスト代等は実費 ※1~2万円程度) 条件を満たす場合: +職業訓練受講手当(月10万円) +通所手当、寄宿手当 |
「公共職業訓練」は、これまでサラリーマンとして働き雇用保険に加入しており、現在は離職しており失業保険を受給している人を対象としたタイプです。
「求職者支援訓練」は、「これまで就業経験がない」「自営業をしていた」等の理由で雇用保険に加入していなかった人を対象としたタイプです。もしくは雇用保険に加入していたけれど、離職期間が長く、失業保険の受給がおわった人も対象となります。
求職者支援訓練に関しては、2023年4月以降は範囲が拡大され、離職者に限らず「直ちに転職せずに働きながらスキルアップを目指す方(在職者)」も対象となりました。ただし雇用保険被保険者は対象外となるため、該当するのは、自営業やフリーランスなどでの在職者となってきます。
なお、ハローワークトレーニングの実務者研修コースは「公共職業訓練(離職者訓練)」と「求職者支援訓練」、このどちらのタイプでも用意されています。
「求職者支援訓練」は月10万円貰えるが条件は厳しい
求職者支援訓練の場合、受講費用が無料になるだけでなく、訓練期間中は「職業訓練受講手当」として毎月10万円の支給があります。
さらに「通所手当(上限あり)」「 寄宿手当(月額10,700円まで)」といった手当も貰えます。
ただし、こうした手当を受け取るには以下のような条件が定められています。
- 本人収入が月8万円以下
- 世帯全体の収入が月30万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- 訓練実施日全てに出席している(やむを得ない事情でも8割以上は出席している)
- 世帯の中で同時に給付金を受給して訓練を受けている者がいない
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けていない
- 過去6年以内に、職業訓練受講給付金の支給を受けていない
月10万円の職業訓練受講手当を受け取るには、基本的に上記すべての条件を満たす必要があります。一方、通所手当や寄宿手当であれば、一部の条件を満たせば受け取れることがあります。
ハローワークで実務者研修を受ける際の注意点やデメリット
ハローワークトレーニングは金銭的なメリットは大きいものの、以下のような注意点やデメリットも存在します。
- 選考がある
- スケジュールに自由が効きづらい
- 選択肢が少なく通学に苦労しやすい
以降ではそれぞれの詳細を解説します。
選考がある
ハローワークトレーニングは希望者全員が受けられるわけではなく、面接や筆記試験による「選考」があります。定員にも限りがあり、1クラスの定員はおおよそ20人~30人程度であり、倍以上の応募が入ることもあります。
また、申し込みをし、選考を経て、訓練開始するまで2〜3か月程度掛かることがありますので、すぐに開始できない点もデメリットといえます。
スケジュールに自由が効きづらい
ハローワークトレーニングの場合、基本的には「通学」で受講することになります。
指定の訓練校に登校し、平日の朝9時~夕方17時頃まで訓練をする生活が続きます。実務者研修コースの場合はこれを概ね半年程度は繰り返すことになります。
一方、民間スクールであれば、大半の科目を「通信」で受講することが可能であり、講習時間や通学する曜日なども自由が効きやすいです。また民間スクールでは、休んだ場合でも「振替受講」ができることが多く、リカバリーもしやすいです。
選択肢が少なく通学に苦労しやすい
実務者研修コースの数は、1つの都道府県で1〜2件程度であり、さほど多くありません。中には募集自体がされてない都道府県もあります(現在募集されている訓練コースは「ハロートレーニングコース情報検索」から検索できます)。
また、仮にお住まいの都道府県で募集がされていたとしても、訓練校の場所と自宅が遠いケースもありえます。訓練校には基本的に毎日通学するため、距離が遠いと負担も大きくなります。
一方、民間スクールであれば数はたくさんあり、近場でスクールが見つかることも多いです。また民間スクールでは「通信」による学習も取り入れられるため、通学面での苦労は生じにくいのです。
費用と利便性どちらを取るかを天秤にかける
ハローワークトレーニングの強みはやはりその「安さ」です。本来、民間スクールで受講すれば10万円~20万円掛かる実務者研修の費用が全額免除され、自己負担はテキスト代等の1万~2万円程度で済みます。
そのため、離職中などで、お金に困っている方であれば心強いサービスといえます。
ただし、民間スクールと比べると通学などで不便に感じる部分もあり、また選考もあるため手間が掛かります。不合格となることもあり、確実に受講できるとも限りません。
そのように一長一短の部分がありますので、両面を天秤にかけ、ハローワークトレーニングと民間スクール、自分にとってどちらが適しているかを検討してみて下さい。
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