介護福祉士実務者研修の資格を保有している人の男女比について、「女性のほうが断然多い」「男性は少ない」などといわれることもあります。実際のところ男女でどちらが多いのでしょうか。
今回は各種データを交えながら、実務者研修の男女比率について解説します。併せて男性が実務者研修を受講することの強みについても触れますので、実務者研修の受講を検討している男性の方はぜひご覧ください。
実務者研修の男女比について
公益財団法人介護労働安定センター「介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」では、介護分野の労働者総計22,154人に対して実施した、就業に関するさまざまな調査結果がまとめられています。
この調査内では「介護福祉士実務者研修」の資格保有者の男女比についての調査も行われており、以下が集計結果となります。
性別 | 保有割合 |
---|---|
男性 | 25.4% |
女性 | 69.3% |
無回答 | 5.3% |
ご覧のように実務者研修の男性の保有割合は約2割弱(25.4%)となります。一方、女性は約7割(69.3%)を占めていることから、実務者研修の保有者は女性が多く、男性は少数派であることがうかがえます。
受講者の男女比は?
「受講者」の男女比については、比率を公表している養成スクールが少ないため、全容が掴みにくい部分があります。ただし、実務者研修は受講者の9割以上が合格する資格といわれていますので、上記の保有者の比率が受講者の比率に直結すると考えても問題ないでしょう。
実際の研修講座においても、女性の受講者の方が多く、男性の受講者が少ない教室が目立ちます。ただし、スクールの所在地や立地によって受講者の性別や年齢も変ってきますので、中には男女比が半々程度に分かれているスクールもあります。
介護福祉士の男女比は?
将来、上位資格となる介護福祉士を取得するために、前提となる実務者研修を受講する方も多いでしょう。「介護福祉士」は介護分野で唯一の国家資格となり、実務経験3年以上に加え、実務者研修を受講すると受験資格が得られます。
それでは、この介護福祉士の男女比はどのような割合となっているのでしょう。以下は、第35回(2023年)介護福祉士国家試験における合格者の男女比です。
性別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
男 | 19,955人 | 29.9 % |
女 | 46,756人 | 70.1 % |
合計 | 66,711人 | 100% |
介護福祉士の合格者においても、男性に比べ女性の方が多いです。男性が約3割、女性が約7割を占めており、比率としては実務者研修とほぼ同じ割合です。
なおこれは第35回に限った話ではなく、第34回、第33回と例年の試験で女性の合格者が約7割を占めている状況が続いています。
介護業界は全体的に女性が多い
実務者研修に限った話ではなく、介護業界全体において、男性よりも女性の比率が高めです。介護業界は昔から女性の多い業界であり、近年は男性からの注目も高まってきてはいるものの、まだまだ女性が大多数を占めている状況が続いています。
公益財団法人介護労働安定センター「介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」では、介護職全体の男女比についても調査が行われており、介護職全体の男女比は、男性 20.9%、女性72.3%、無回答6.9%の結果となっています。
なお、特に女性比率の高い介護職種は以下となります。
介護職種 | 女性比率 |
---|---|
看護職員 | 84.4% |
訪問介護員 | 78.1% |
サービス提供責任者 | 76.4% |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 72.5% |
ご覧のように、「看護職員」は特に女性比率が高く84.4%を占めています。「訪問介護員(ホームヘルパー)」の職種にも女性は多く、在籍しているホームヘルパーのほとんどが女性の事業所もあります。
一方で「生活相談員」や「PT(理学療法士)・OT(作業療法士)・ST(言語聴覚士)等」の職種は、介護職種の中では男性比率が高めです。
なぜ介護は女性が多い?
介護業界に女性が多い理由は諸説がありますが、一般的によくいわれる理由としては「女性の方が身の回りの世話、掃除、料理等に長けている人が多い」「排泄介助などに抵抗が薄い」などが挙げられます。
また、過去に看護師が「看護婦」と呼ばれていたように、「看護や介護をするのは女性」というイメージが昔から日本では根付いていたことも関係していると考えられています。
ただし、近年はジェンダーの考え方が見直され、これまでのイメージや風潮は過去のものになりつつもあります。働き方の多用化も進み、介護職に注目する男性も以前から比べると高まってきているため、今後は男女比率がまた変わっていく可能性もあるでしょう。
実務者研修を男性が受講することの「強み」は?
男性は介護に不利というわけではなく、むしろ実務者研修を男性が受講することで「強み」となることがあります。
具体的には、男性の強みとして以下3つが挙げられます。
- 体格や体力面では男性が有利
- 同性相手に強い
- 人間関係のバランスがとれる
以降では、それぞれの詳細を解説します。
体格や体力面では男性が有利
実務者研修を取得すると、訪問介護(ホームヘルパー)の仕事も行えるようになります。
訪問介護の仕事では、訪問先で基本的にはクライアントと1対1で接することになり、クライアントの身体を支えたり持ち上げたりする場面も多いことから、女性より男性の方が体格や体力面で有利になりやすいです。
特に身体が不自由で移乗介助などが発生しやすいクライアントの場合、男性の実務者研修保有者が重宝されるでしょう。
同性相手に強い
クライアントが男性の場合、「女性の介護スタッフに入浴介助や排泄介助をしてもらうのは気が引ける」「女性の介護スタッフに裸や下半身を見られるのは恥ずかしい」などと感じる方もいます。
男性同士であれば、こうした余計な気苦労は減り、クライアント側も心置きなくサービスを受けられるメリットがあります。
人間関係のバランスがとれる
男性ばかり、女性ばかりの環境よりも、男女がバランスよく存在した方が、組織内の人間関係が改善されたり、モチベーションが高まったりすることがあります。女性の多い介護業界では、男性が加わることにより、職場の人間関係が引き締まったり、女性同士のいざこざなどが減ることもあるのです。
これは職場だけでなく実務者研修の教室にもいえることであり、女性ばかりの受講グループに男性が加わることで調和がとれ、お互いの距離が縮まったり、団結心が生まれることもあるでしょう。
「弱み」となることもある
男性が介護職として働く場合、強みがある一方で弱みとなる部分もあります。
まず、女性の介護職を望むクライアントも一定数いるということです。「女性に介護してもらったほうが安心する」「明るい女性に介護してもらいたい」「男性だと話しにくいので女性がよい」等を望んでいるクライアントが相手であると、男性の場合、毛嫌いされてしまうことがあります。
相手に共感する力、相手との距離を縮める力についても、女性のほうが優れていることが多く、男性の場合は女性のように上手くクライアントと打ち解けられないこともあります。
また、入浴介助や排泄介助などは、前述もしたようにクライアントが自分と同じ男性であれば強みとなりますが、クライアントが女性であった場合、恥ずかしさ等の理由から大きな弱点となってしまうことがあります。
男性だからといって臆せずにチャレンジしてみよう!
以上のように、介護福祉士実務者研修の資格保有者は女性が多く、男性は少数派となります。だからといって女性のための資格というわけではなく、男性で受講している方も一定数おり、男性が受講することは決しておかしいことではありません。
男性だからこそ得られる強みもありますし、実務者研修を取得すれば、「介護福祉士」や「サービス提供責任者(サ責)」にステップアップする足がかりともなりますので、将来のためにもなります。
意欲のある方は、男性だからといって臆せずに積極的にチャレンジしてみてはいかがでしょう。