実務者研修は「研修」といっても1日や2日で終わるものではなく、取得するまでの道のりは長いです。養成スクール等に入学し、地道に学習を進めていくことになります。
当記事では、実務者研修の研修期間について「最短」と「最長」それぞれのケースから解説していきます。スムーズに学習するためのコツについても触れますので、取得までの期間が気になっている方はぜひご覧ください。
通常は最短で6か月かかる
厚生労働省から提示されている「実務者研修の指定基準について」において、実務者研修の研修期間は、450時間以上・6ヶ月間と定められています。
無資格者が取得を目指す場合、最短でもこの450時間以上・6ヶ月間、研修を受ける必要があります。
また、学習をする上で「通学」「通信」に関する定めもあります。
通学が必須となる科目は、介護過程Ⅲ(45時間)+医療的ケアです。これらの科目は養成スクールの教室に通学し、他の受講者たちと一緒に受講する必要があります。これをスクーリング授業と呼びます。
一方、スクーリング授業以外の科目(計405時間分)は、通信での学習が認められており、テキストやWEBの教材を使い、自宅やカフェなど好きな場所で受講が可能です。
学習方法 | 学習内容 |
---|---|
通学(スクーリング授業) | 介護過程Ⅲ(45時間)+医療的ケア |
通信 | 上記以外の科目(405時間) |
450時間より短縮することはできない?
無資格者の場合、研修時間を450時間以下に短縮することは基本的にできません。
養成スクール側も、厚生労働省側の定める基準に則りカリキュラムを組んでいますので、どのスクールに通った場合でも研修時間は変わらないのです。
関連資格があれば取得まで「最短」で1か月
実務者研修は450時間以上・6ヶ月間の研修期間が必要になりますが、これはあくまで無資格者の場合です。
介護関連の資格を保有している人であれば、一部科目が免除となるため、研修期間の短縮が可能です。
厚生労働省より、各保有資格別の研修時間は以下のように定められています。
保有資格 | 研修時間 |
---|---|
無資格者 | 450時間 |
ホームヘルパー3級 | 420時間 |
介護職員初任者研修 | 320時間 |
ホームヘルパー2級 | 320時間 |
ホームヘルパー1級 | 95時間 |
介護職員基礎研修 | 50時間 |
※上記の表に加えて、これとは別に「医療的ケア」の演習が必要
たとえば、「介護職員初任者研修」の資格を保有している方であれば、研修時間は450時間から320時間に短縮され(130時間短縮)、最短2か月程度で実務者研修を取得できます。
最上位の「介護職員基礎研修」の資格を保有している方であれば、研修時間は450時間から50時間に短縮され(400時間短縮)、最短1か月程度で実務者研修を取得できます。
研修時間と受講料は比例する
実務者研修の受講料は、関連資格を保有し、研修時間が少なくなる人ほど安くなるのが一般的です。
例として、以下は、保有資格別の実務者研修受講料のモデルケースです。
- 無資格者:受講料10万円
- 介護職員初任者研修保有者:受講料7万円
- 介護職員基礎研修保有者:受講料4万円
このように関連資格を保有していれば、その分受講料を安く抑えられます。
取得までの「最長」期間は?
ここまでは「最短」期間について解説しましたが、反対に「最長」ではどの程度の期間が必要になるのでしょう。ここでは実務者研修を取得する上での最長期間や期限について解説します。
明確な期限はない
実務者研修の「期限」については、厚生労働省側もはっきりと定めていません。「数年かけて少しずつ研修を修了すればよい」ということが根本的な理念とされています。
たとえば無資格者の場合、450時間以上・6ヶ月間が定めとなっていますが、450時間分の研修を1年、2年かけて受講しても問題はありません。(ただし受講期限を6か月としているスクールなどでは、6か月間で学ぶ必要あり)。
実際、仕事をしながら受講する人などであれば、6か月で終わずに1年程度かかってしまうケースもあります。
受講期限について
厚生労働省側ではなく、スクール側が独自に「受講期限」という形で期限を設けていることがあります。
受講期限というのは「この期間内に実務者研修を修了してください」という期限のことであり、受講期限を6ヵ月としているスクールもあれば、最長3年としているスクールもあります。
また、事故や病気などで通学が長期間できなくなった場合、「休学」を申請できるスクールもあります。
こうした受講期限や休学についてのルールはスクール次第となりますので、入学前にスクール側が提示するルールをよく確認しておきたいところです。
実務者研修をスムーズに取得するコツ
実務者研修は長い研修であるが故に、スムーズに取得を目指すためには進め方が重要になります。ここではスムーズに取得するための以下3つのコツを解説します。
- スケジュールを組む
- 自習室を活用する
- 職場に協力してもらう
スケジュールを組む
無資格者の場合、自宅などで405時間分の通信学習を進めることになります。仮に405時間を6ヵ月(約180日)で学ぶと想定した場合、単純計算で一日約2.25時間の勉強が必要になります。実際、仕事をしながらだと毎日勉強ができるとは限らないため、休日に多めに勉強をするなどの工夫も必要です。
スムーズに進めるには「事前にスケジュールをしっかりと組むこと」「無理なく調整の利くスケジュールとして組むこと」が大切であり、スケジュールの質がその後の進捗を左右します。
自習室を活用する
「家で勉強するのは苦手」「家族がいて集中できない」などの事情がある場合は、図書館、カフェ、コワーキングスペースなど、勉強する環境を変えてみるのも一つのコツです。通信学習であれば、基本的に場所を問わずどこでも勉強可能であるため、自分が集中しやすい環境を選ぶのがよいでしょう。
また「自習室」を夜遅くまで解放しているスクールもありますので、実習室の環境や立地(通いやすさ)でスクールを選んでみるのもおすすめです。
職場に協力してもらう
実務者研修では、定期的に課題を提出したり、スクーリング授業で教室に通学する必要もあります。時には仕事を休まなければならない事もあるため、職場に実務者研修を受講していることを報告し、上司や同僚の協力を仰ぐことも大切です。
特にシフト制や休みが不定期の職場の場合、スクーリング授業などの日程とバッティングすることもありますので、そうした際に職場側の理解や協力があると心強いでしょう。
なお、どうしてもスクーリング授業に出席できない場合、「振替授業」で受講することもできます。ただし、振替授業の有無、規模(利用のしやすさ)、料金などはスクールによってさまざまです。こうした振替授業の体制も入学前によく確認しておきたいところです。
最短6ヵ月で修了するには計画と自己管理が大切
以上のように、無資格者が実務者研修を受講する場合は最短でも6ヵ月の期間が必要になります。
厚生労働省側の定めにより、これ以上に短縮することはできず、少なくとも6ヵ月間は自宅学習やスクーリング授業に通う日々が続くことになります。
また、学ぶ量が多いことから、向こう見ずに学習を進めると6ヵ月で修了できないおそれもあります。スムーズに取得するためには、しっかりと計画を立て、自己管理をしながら、地道に学習を進めていきましょう。