介護関連で唯一の国家資格となる「介護福祉士」。この資格は簡単に取れる資格ではなく、受験資格を満たすだけでも何年もの期間を要します。
そのため、40代以降のミドル世代になると「40代から受験するのは遅いのでは」「40代が取得しても意味がないのでは」等、年齢的な面で不安を感じている方もいらっしゃるかと思います。
そこで当記事では、介護福祉士国家試験と40代という年齢との関係について解説します。40代もしくはそれ以降で介護福祉士の受験を考えている方はぜひご覧ください。
40代の受験者は多い
結論からいえば、40代という年齢は、介護福祉士国家試験を受験する上で決して遅くはありません。
参考として、以下は、直近第35回(2023年)介護福祉士国家試験における合格者の年齢分布です。
年齢分布 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
~20歳 | 5,001人 | 7.5 % |
21~30歳 | 16,934人 | 25.4% |
31~40歳 | 12,920 人 | 19.4% |
41~50歳 | 16,877 人 | 25.3 % |
51~60歳 | 12,197人 | 18.3% |
61~歳 | 2,782人 | 4.2% |
合計 | 66,711人 | 100% |
全年代の中で「21~30歳」と「41~50歳」の合格者が2トップで多く、双方とも全体の約25%の割合を占めています。つまり40代での受験は遅くはなく、むしろ最もポピュラーな受験年齢が20代と40代であると言い換えられます。
さらには「51~60歳」の合格者割合も18.3%と高いため、40代はもとより50代で受験するのも遅くはない国家資格といえるでしょう。
40代で受験をすることが遅くはない理由
介護福祉士国家試験を40代で受験をすることが遅くはない理由には、前述した受験者の年齢分布の話だけでなく、他にも以下のような理由があります。
- 介護職での40代は若いため
- 収入の支えとなる
- 将来のためにもなる
以降では、それぞれの詳細を解説します。
介護職での40代は若いため
介護職は全体的に年齢層が高く、高齢になっても長く働ける業界です。
参考として、令和元年度「介護労働実態調査」では、総計9,080の事業所で働く88,047人の介護職の年齢分布について調査しており、以下がその集計結果となります。
年齢分布 | 割合 |
---|---|
20歳未満 | 0.3% |
20歳以上25歳未満 | 2.5% |
25歳以上30歳未満 | 4.8% |
30歳以上35歳未満 | 7.0% |
35歳以上40歳未満 | 9.3% |
40歳以上45歳未満 | 12.0% |
45歳以上50歳未満 | 12.1% |
50歳以上55歳未満 | 11.6% |
55歳以上60歳未満 | 11.4% |
60歳以上65歳未満 | 10.0% |
65歳以上70歳未満 | 7.4% |
70歳以上 | 5.0% |
ご覧のように「40歳以上45歳未満」が12.0%、「45歳以上50歳未満」が12.1%となり、労働者の年齢層としては40代の割合が最も高い結果となっています。また、50歳~65歳までの割合も比較的高めです。
さらには「70歳以上」の高齢層の割合も5.0%を占めています。実際に70代80代の方が現役の介護スタッフとして働いている施設も数多く存在します。一方で「20歳以上25歳未満」は2.5%となり、若い層は少ない割合となっています。
こうしたことから、40代という年齢は介護職では若い部類に入り、介護福祉士国家試験を受ける年齢としても遅くはありません。仮に40歳で資格を取得し80歳まで働くとすれば、約40年間資格の恩恵を受けられるため、取得する意味は十分にあるでしょう。
収入の支えとなる
40代となると家庭を持っている方も多いかと思いますので、介護職の「収入事情」はよく理解しておきたいところです。
以下は、厚生労働省「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」内で集計されている、介護資格別の平均給与額データです。
資格名 | 平均給与額 |
---|---|
介護福祉士 | 316,990円 |
社会福祉士 | 337,920円 |
介護支援専門員 | 351,480円 |
実務者研修 | 290,580円 |
介護職員初任者研修 | 289,070円 |
保有資格なし | 263,010円 |
たとえば40代未経験で介護職へ転職した場合、最初は「保有資格なし」の扱いとなりますので、この平均給与額データのように毎月の給与は20万円代となってしまうことがあります。
一方で、介護関連の資格を保有していると「資格手当」がつき、給料を増やしてもらえる施設が多いです。特に介護福祉士の資格は、介護関連で唯一の国家資格となり評価も高く、取得すれば月の給与が30万円を超えることもあります。
子育てなどでお金の掛かりやすい40代だからこそ、収入を底上げするためにも、介護福祉士は積極的に取っておきたい資格といえるのです。
将来のためにもなる
介護職は慢性的な人手不足を抱えている関係から、幅広い年齢の人材を募集しています。しかし体力のある若い人材を優先して採用する施設もあります。
そのため、40代の時にはスムーズに就職先が決まった人であっても、将来50代60代になって別の介護施設へ転職することになった場合、無資格の状態であるとなかなか採用が勝ち取れない可能性があります。
そのような時に介護福祉士の資格があると心強く、介護福祉士の資格は一定の知識やスキルを有していることの対外的な証明となるため、若い人との年齢的なハンデをかき消すための武器となってくれます。
40代で受験する際に覚えておくこと
スムーズに間違いなく資格取得を進めるためにも、40代で介護福祉士国家試験を受験する場合、以下3つの点を頭にいれておくことが大切です。
- 3年以上の期間が必要
- 実務者研修を受講しなければならない
- 後回しには注意
以降では、それぞれの詳細を解説します。
3年以上の期間が必要
介護福祉士国家試験は「受験資格」を満たさないと受験ができません。この受験資格を満たすためには、以下3つのルートが用意されています。
- 実務経験ルート
- 養成施設ルート
- 福祉系高校ルート
※加えて外国人用の「経済連携協定(EPA)ルート」も存在します。
40代の人が受験資格を満たす場合、一般的には1つ目の「実務経験ルート」を利用することが多いです。この実務経験ルートで受験資格を満たす場合、介護等の業務の実務経験を3年以上積み、さらに「実務者研修」を受講する必要があります(実務者研修の詳細は後述)。
たとえば40歳の人が未経験で介護職へ転職した場合、受験資格を得られるのは、最短でも3年後の43歳以降となります。すぐには受験できない資格であることを理解しておく必要があります。
実務者研修を受講しなければならない
実務経験ルートで受験資格を満たす場合、3年以上の実務経験とは別に「実務者研修」を受講する必要があります。
実務者研修とは座学と実技から成る研修であり、民間の養成スクールなどに入学し、計450時間(最低6か月以上)学ぶ必要があります。研修費用は10~20万円程度が相場です(無資格者の場合)。
多くの科目は通信学習が可能であり、働きながら受講することができます。しかし、6か月以上の長い期間を要し、スクーリング授業においては通学も必要になるため、仕事をしながら学ぶ場合は計画的に進めることが大切になります。
加えて、実務者研修の受講とは別に、国家試験の試験勉強も進める必要があります(合計250時間程度)。
後回しには注意
介護福祉士国家試験を受験する上で40代という年齢は遅くはありません。しかし「遅くはないから大丈夫」と後回しにしてしまうと、受験するタイミングを逃してしまうことがあります。
特に40代という年齢は、子育てや親の介護などが発生することもあります。仕事と勉強の両立はただでさえハードな生活となりやすく、さらに他のタスクが生じると上手く勉強が進められないこともあります。
40代だからこそ後回しにせず、時間に余裕があり勉強に専念できる時期に受験しておくのが望ましいでしょう。
40代だからこそ取得したい資格
以上のように、40代という年齢は介護福祉士国家試験を受験する上で遅くはない年齢です。実際にも40代50代の受験者は多く、試験会場で浮くこともあまりないでしょう。
また収入アップやキャリアアップにも繋げられるため、働き盛りの40代だからこそ積極的に取得したい資格でもあります。
資格取得を通じて介護に対する理解そのものも深まりますので、意欲のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょう。