経管栄養とは?

介護の知識シリーズ 《Ⅰ》医療的ケアの基礎知識 【経管栄養とは?】

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このページは《Ⅰ》医療的ケアの基礎知識の中の【経管栄養とは?】のページです。
医療的ケアの基礎知識についての目次は末尾にあります。

経管栄養とは?

経管栄養とは、経口摂取(口から食べ物を取ること)ができない、もしくは、経口摂取のみでは十分な食事量が取れない人が、チューブを挿入して、胃や小腸に直接栄養剤を注入することで、栄養状態を維持・改善するために行う方法です。

経管栄養の種類

介護職等が資格取得後に認められている経管栄養の種類は、胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養経鼻経管栄養です。(2種類の経管栄養については別記事にて詳しく解説しています。)

人は生きていくために食べ物を食べ、その中から栄養や水分を吸収し、栄養補給をする必要があります。 ですが、脳梗塞などによる嚥下障害(うまく飲み込めないこと)や、認知症による摂食障害、誤嚥性肺炎を繰り返すなどのさまざまな原因により、口から食物を摂取できなくなった場合でも、何らかの方法で栄養補給をする必要があります。

栄養補給には、経管栄養と静脈栄養がありますが、経管栄養のほうが静脈栄養よりも、消化器官が機能して消化吸収するため、より経口摂取と生理的に近い状態で栄養補給できます。そのため、消化吸収能力がある人には、経管栄養が選択されることが多いです。

ちなみに静脈栄養には、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。 私たちが風邪をひいた時に受ける水分補給やビタミンの注入は末梢静脈からの投与で、いわゆる点滴です。この時と同じ投与方法で栄養補給するのが、末梢静脈栄養です。

末梢静脈栄養では、腕にある細い末梢血管に栄養(輸液)を注入するため、高カロリーな輸液の刺激で痛みや血管が炎症したり、壊死を起こすこともあります。そのため、長期的に高カロリーな輸液が必要となる場合は、中心静脈栄養を行います。

ただ、中心静脈栄養は、末梢静脈栄養とは違い簡便には行えず、局所麻酔をして心臓の近くの血管に管(カテーテル)を挿入し、それを皮膚に縫って固定し留置します。 もっとも、静脈栄養は医療行為であり、介護職が行える行為ではありません。

経管栄養のリスク

経管栄養のリスクとして、誤嚥性肺炎があります。栄養剤が胃から食道へ逆流する現象が体内で起こり、誤嚥することが原因です。誤嚥を予防したり、誤嚥したことを早期に気づき対応していく必要があります。

予防対策①食事摂取時の体位

人は普段、座って食事をすることがほとんどですが、それは理にかなっていることで、座位に近いほど栄養剤の逆流を防止し、胃から十二指腸への流れもスムーズになります。

そのため、利用者の疾患の有無にもよりますが、なるべく食事摂取時は座位に近い体位の30~60°程度にギャッチアップします。 ベッドが0°に近づくほど、げっぷや咳込みがきっかけで嘔吐しやすくなり、誤嚥にもつながるので、食事摂取時の体位の確認は必須です。

予防対策②滴下スピード

経管栄養では、液体栄養剤を使う場合、ボトルに入れた栄養剤をチューブを用いて胃や腸に注入しますが、クレンメで滴下の速度を調節する必要があります。

急に滴下速度を速めると、胃内の圧力が高まり嘔吐につながる可能性があります。利用者により栄養剤の注入時間は、医師の指示書に示されていますが、間に合わないからといって滴下終了間近に帳尻合わせで滴下スピードを急に速めたりすることがないように、食事中の滴下速度の管理をする必要があります。

経管栄養における注意点

食事中の体位変換や吸引、咳込みなどは、栄養剤の逆流や嘔吐のタイミングにもなります。そういった行為があった後は、体内で逆流が起こっていないかの確認のために、呼吸音の異常やSpO2の変化、表情や顔色などを観察することが大切です。もし、異常が見られた場合は、滴下を一旦止めて、呼吸の確保をし、医療職者へ連絡をします。

口腔ケアは必要

経管栄養では、経口摂取していないため、口腔ケアが必要ないと思われるかもしれません。しかし経口摂取していないと、口腔内の自浄作用のある唾液の分泌が減り、菌が繁殖し、汚い唾液を誤嚥することで誤嚥性肺炎にもつながります。口腔ケアを行うことは、肺炎予防のため大切です。

経管栄養は食事

食事は人生の楽しみの一つで、皆さんも美味しいものを食べることに幸せを感じますよね。食事摂取方法の変更は、こういった食事の楽しみを奪う結果となり、利用者にとって精神的に大きなストレスになることも想像できます。

経管栄養は、利用者にとって食事であり、楽しみな時間にもなります。食事の時間を心地よく過ごしてもらうために、安全に、そして利用者に合った適切な技術で医療的ケアの提供をしていきたいですね。

監修

下岳彦

順天堂大学 医学部&スポーツ健康科学部 非常勤講師

1996年、順天堂大学医学部在学時にラグビー試合中の事故で脊髄損傷となり、以後車いすの生活となる。

1998年、医師免許取得。順天堂医院精神科にて研修医修了後、ハワイ大学(心理学)、サンディエゴ州立大学大学院(スポーツ心理学)に留学。

2011年、順天堂大学大学院医学研究科にて自律神経の研究を行い、医学博士号取得。

2012年より、順天堂大学 医学部 非常勤講師。

2019年より、順天堂大学 スポーツ健康科学部 非常勤講師を併任。

医学、スポーツ心理学、自律神経研究、栄養医学、および自身の怪我によるハンディキャップの経験に基づき、パフォーマンスの改善、QOL(Quality of Life:人生の質)の向上、スポーツ観戦のバリアフリーについてのアドバイスも行っている。

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