ヘルパーの正式名称はホームヘルパーと言い、2013年3月末までホームヘルパー1級・2級・3級の養成研修制度がありました。現在この制度は廃止され、1級に代わる研修として「介護福祉士実務者研修」が設けられています。
実務者研修はホームヘルパー1級に相当すると言われるため、「実務者研修=ヘルパー1級」と認識される方もいらっしゃいます。しかし、実際に内容を見てみると、いくつかはっきりした違いがあります。今回は「実務者研修とヘルパー1級の違い」について詳しく解説します。
- 違いは「介護過程Ⅲ」「医療的ケア」「介護福祉士国家試験の受験資格」の3つ
- ヘルパー1級をお持ちの方は多くの科目が免除され、95時間で修了を目指せます
- ヘルパー1級は今も有効な修了資格で、履歴書にも記載できます
実務者研修とヘルパー1級の違いは3つ
実務者研修とホームヘルパー1級の違いは「学習内容」と「介護福祉士国家試験の受験資格」にあり、具体的には次の3つです。
- 介護過程Ⅲの追加
- 医療的ケアの追加
- 介護福祉士国家試験の受験資格
3つの項目を順に説明します。
介護過程Ⅲの追加
実務者研修では「介護過程Ⅲ」の科目が追加されました。介護過程Ⅲでは、介護過程の展開をグループワークで学びます。
具体的には、介護が必要な方の事例を用いて、①アセスメント、②介護計画立案、③介護計画実践、④評価を行います。介護の現場では①から④を繰り返すことで、介護を必要とされる方のニーズに合った介護サービスを提供しています。
なお、介護過程Ⅲはスクールへの通学が必須となる科目です。
医療的ケアの追加
実務者研修では介護過程Ⅲに加え「医療的ケア」の科目も追加されました。医療的ケアでは、①喀痰吸引、②経管栄養の学習・演習を行います。
喀痰吸引とは、ご自身で痰を出せない方に対し、機械の繋がった管を鼻・口・気管カニューレから挿入し痰を吸引することをいいます。痰の貯留は誤嚥性肺炎や息苦しさの原因となり、大変危険です。また、経管栄養は、口から食事がとれない方に対して、胃や腸に繋がった管から栄養を投与することをいいます。
医療的ケアは、以前は医師や看護師など医療職にしか認められていませんでしたが、平成24年(2012年)4月の法改正により、一定の研修を受けた介護職員も実施できるようになりました。喀痰吸引や経管栄養を必要とされる方が多くいるため、介護職にも求められる技術となっています。なお、医療的ケアの演習は、スクールへの通学が必須となります。
実務者研修で学ぶのは、医療的ケアの講義と演習(シミュレーター学習)までです。実際に現場で喀痰吸引・経管栄養を行うには、①実務者研修の医療的ケアを修了したうえで、②登録研修機関で実地研修を受け、③都道府県に「認定特定行為業務従事者」として登録し、④勤務先が「登録特定行為事業者」として登録されている、という4つのステップが必要です。
介護福祉士国家試験の受験資格
介護現場での実務経験を積んで介護福祉士を目指す「実務経験ルート」では、3年以上の実務経験に加えて、実務者研修の修了が受験の必須要件となっています。ヘルパー1級の修了だけでは、この要件を満たせません。
実務者研修制度ができる前は、さまざまなルートで介護福祉士国家試験を受験できました。しかしその結果として、介護の現場における知識や技術に大きな個人差があることが問題となっていました。現在は実務者研修を必須要件とすることで、介護福祉士を目指すすべての方が、一定水準の知識・技術を身につけたうえで試験に臨める仕組みになっています。
実務者研修を修了するメリット
実務者研修を修了することで得られるメリットは、ヘルパー1級よりも多くあります。主なメリットは次の3つです。
- 給与アップにつながる可能性がある
- サービス提供責任者の要件を満たせる
- 働く場所の選択肢が増える
3つを順に解説します。
給与アップにつながる可能性がある
厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、介護職員(月給・常勤)の平均給与額は、保有資格なしの方が290,620円であるのに対し、実務者研修修了者(介護職員基礎研修・ヘルパー1級を含む区分)は327,260円、介護福祉士は350,050円となっています。
実務者研修の修了者は、より高度な介護サービスを提供でき、介護を必要とされる方に幅広く対応できます。こうした専門性が評価され、手当や昇給の対象になる場合があります。さらに実務者研修は介護福祉士への必須ステップですので、修了はその先の給与アップにもつながっていきます。
サービス提供責任者の要件を満たせる
実務者研修を修了すると、サービス提供責任者(略して「サ責」)の要件を満たせるため、キャリアアップにつながるというメリットもあります。
サービス提供責任者は、訪問介護事業所の介護業務におけるリーダーのような存在です。ケアマネジャーや訪問介護員との連携・調整をするコーディネートの役割を担っています。訪問介護事業所では「利用者40人に対してサービス提供責任者1人以上を配置する」と定められており、ニーズが高まっています。
働く場所の選択肢が増える
実務者研修の修了により、働く場所の選択肢が増えます。高度な介護サービスを提供できる人材は、病院、施設、在宅とさまざまな環境で活躍できるためです。
場合によっては、実務者研修の修了が介護職の採用要件に記載されていることもありますし、履歴書に実務者研修について記載されていると採用で評価されることもあります。働く場所の選択肢が増えることで、より自分に合った職場で自分らしく働くことができます。
ヘルパー1級をお持ちの方は95時間で修了を目指せる
ヘルパー1級を修了されている方は、実務者研修の多くの科目が免除され、受講時間は95時間まで短縮されます。
ヘルパー1級保有者が実務者研修で学ぶ科目は「介護過程Ⅲ」と「医療的ケア」のみです。時間にすると介護過程Ⅲ45時間、医療的ケア50時間の、合計95時間です。医療的ケアの科目では、講義に加えて演習の修了が必要です。演習の時間数はスクールによって異なりますので、受講前にご確認ください。
一方、介護の資格をお持ちでない方が実務者研修を受講する場合は、20科目・450時間の学習が必要です。実務者研修の科目とそれぞれの受講時間は以下の通りです。
| 科目 | 受講時間 |
|---|---|
| 1. 人間の尊厳と自立 | 5時間 |
| 2. 社会の理解Ⅰ | 5時間 |
| 3. 社会の理解Ⅱ | 30時間 |
| 4. 介護の基本Ⅰ | 10時間 |
| 5. 介護の基本Ⅱ | 20時間 |
| 6. コミュニケーション技術 | 20時間 |
| 7. 生活支援技術Ⅰ | 20時間 |
| 8. 生活支援技術Ⅱ | 30時間 |
| 9. 発達と老化の理解Ⅰ | 10時間 |
| 10. 発達と老化の理解Ⅱ | 20時間 |
| 11. 認知症の理解Ⅰ | 10時間 |
| 12. 認知症の理解Ⅱ | 20時間 |
| 13. 障害の理解Ⅰ | 10時間 |
| 14. 障害の理解Ⅱ | 20時間 |
| 15. こころとからだのしくみⅠ | 20時間 |
| 16. こころとからだのしくみⅡ | 60時間 |
| 17. 介護過程Ⅰ | 20時間 |
| 18. 介護過程Ⅱ | 25時間 |
| 19. 介護過程Ⅲ | 45時間 |
| 20. 医療的ケア | 50時間 |
出典:厚生労働省「実務者研修における『他研修等の修了認定』の留意点について」
ヘルパー1級を修了されている方は、かなりの科目が免除されることが分かります。なお、ヘルパー1級は現在も有効な修了資格であり、履歴書にも記載できます。書き方については実務者研修の履歴書への書き方の記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
ヘルパー1級は今でも有効な資格ですか?
有効です。養成研修の制度自体は2013年3月末で廃止されましたが、すでに修了された方の資格がなくなるわけではありません。履歴書にも保有資格として記載できますし、実務者研修を受講する際の科目免除にも使えます。
ヘルパー1級を持っていると、実務者研修はどれくらいで修了できますか?
受講が必要なのは介護過程Ⅲ(45時間)と医療的ケア(50時間)の合計95時間です(別途、医療的ケアの演習が必要です)。多くの科目が免除されるため、無資格の方(450時間)に比べて短い期間・少ない負担で修了を目指せます。
ヘルパー1級だけで介護福祉士国家試験を受験できますか?
実務経験ルートで受験する場合、ヘルパー1級の修了だけでは受験できません。3年以上の実務経験に加えて、実務者研修の修了が必要です。ヘルパー1級をお持ちの方は95時間で実務者研修を修了できるため、介護福祉士を目指すなら早めの受講がおすすめです。
まとめ:実務者研修とヘルパー1級には明確な違いがある
今回は「実務者研修とヘルパー1級の違い」と「実務者研修を修了するメリット」について解説しました。実務者研修とヘルパー1級には明確な違いがあり、その違いは学習内容(介護過程Ⅲ・医療的ケア)と介護福祉士国家試験の受験資格にあります。
また、実務者研修はヘルパー1級に比べて、給与アップの可能性やサービス提供責任者へのキャリアアップなど、修了することで得られるメリットが多くあります。介護のニーズが高まっている近年だからこそ、介護職の役割も増え、活躍できる場が広がっています。
ヘルパー1級をお持ちの方なら、95時間で実務者研修の修了を目指せます。スキルアップやキャリアアップを目指している方は、土屋ケアカレッジの実務者研修講座で修了を目指してみてはいかがでしょうか。

